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すべて話し終えると、誰も喋らず辺りはシンと静まりかえった。
パロマはお叱りを受ける覚悟で4人の表情を恐る恐る伺う。あれだけの事をしでかして、理由はアリスに会いたかっただけだなんて、きっと誰も許してはくれないとパロマは思った。
唖然としたエリオットが、まず初めに口を開いた。
「真っっっ白か・・・。もう疑いようがない程真っ白か・・・。」
「エ、エリオットさんっ?大丈夫ですか?!口から何か煙みたいなのが出かかっていますよ?!?!」
「気にするな。あまりの衝撃に死にかけているだけだろう。」
ブラッドはそう言うが、骨という骨が軟骨化したみたいなエリオットなんて今まで見た事が無い。パロマがおっかなびっくりエリオットの腕をツンツンと突っついていると、
「話は戻るが、それでは何故机の上の書類に気付いた時、私なり誰でも良いから尋ねてみようと思わなかったんだ。」
当然の事の様に尋ねるブラッドに、パロマは驚愕して彼を見た。
「だって!怪しげな元帳やどこかの組織の内部機密や脅迫状やらの書類の中から、一枚ピラッと出て来たんですよ?!そんなの気安く聞ける訳ないじゃないですか!!」
パロマの中では尋ねたら最後、アリスも自分も生きたままコンクリートに埋められる、と恐れ慄いていたのだった。しかし一般人なら当たり前の話でも、黒く染まった男達にはその感覚が全くわからない。
「そんなん貯金通帳にタレこみ情報に挨拶状だろ?何がいけねぇんだよ。」
ぶっ飛んだ意識が戻ったエリオットの裏返した発想に、パロマは口をガクガクと震わせた。
「い け ま せ ん よ!!!あそこにあったら暗殺予定の指名手配書だとか思っちゃうじゃないですか!!」
「何だよそれ〜。それじゃあ邪推したパロマがそもそも間違っていたんじゃないかっ。こっちは誠心誠意で仕事してるってのに。」
そんなに健気に仕事に励んでいるとは思えないディーが、お前が悪いとパロマを責めた。彼の肩には大きな斧がギラギラと照り輝いている。パロマはクラッと目眩がしてきた。エースとはちょっと違った意味での会話のすれ違いを感じる。
「と、とにかく、誰にも言わず逃げ出してしまったのは、本当にすみませんでした。」
パロマは最後に深々と頭を下げて謝罪した。理由はどうあれ、悪い事をしたという気持ちがずっとあったのだ。屋敷を飛び出してから罪悪感がチクリチクリとパロマの心を蝕んでいた。こうしてちゃんと謝る事が出来たので、パロマの胸が少しだけ軽くなった。
「ま、僕達はお前の事なんか、ちっとも気にして無かったけどね〜。」
とダムが言う。「ホントお騒がせだな」と、ディーと二人で頷き合った。


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bkm


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