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「え?あっ、そう言えば。」
パロマが自分の姿を上から覗く。一国を治める城の贅を凝らした客室で、このふざけた格好はどう考えても不釣り合いだ。何故『着替え』という単語が頭に浮かばなかったのかと過去の自分を非難したい。
「ごめんなさい!気づきませんでしたっ!!私、もう一度出直してきますね。誰か予備の制服を持っ・・・・な、何ですか・・・・。」
回れ右をすると、双子が部屋の外に繋がる廊下の扉の前で仁王立ちして塞いでいた。二人の浮かべる表情は、とっても見覚えがあった。
嫌な予感しかしない。
「おいおい、お前まさか着替える気?こんな弄り甲斐がありそうな状態を、みすみす見逃す訳ないだろう。」
ディーがやっぱりな台詞を吐く。
「着ろって言われても、こんな嘘くせぇ衣装はナカナカ着れねぇぜ?宴会芸でも仕込んでんじゃねぇの。」
パロマの背後はエリオットに固められた。どうやら彼は、双子の悪ふざけに加担する側に回ったらしい。いつもは喧嘩ばかりしているのに、こんな時だけ結束を深めてどうするのだ。
しかし、これでパロマは逃げ場を失った。
「いえっあの・・・私が好んで着ているつもりは無いんですけど・・・。」
「ふぅ〜ん?ま、こんなんでも完っ璧に衣装負けしているけどね。ホンット弱そうだな〜。安っぽくて質が悪過ぎ。誰がこんなエセ忍者に騙されるんだ?」
「案外本人が一番騙されてんじゃないの?抜き足差し足とか言っちゃって、自分で盛り上がってそうだもんな、パロマだったら。」
(なっ!!何で分かっちゃうの?!)
目をまん丸くしたパロマに、3人が「図星だな」と思った。
そして、そう思われたのがパロマにも分かって、急にすべてが恥ずかしくなってきた。
「もっもう!充分見ましたよね?!もう行っても良いですか?行かせてくださいっお願いですから・・っ!」
「でも、やっぱ何か足んないんだよね〜。何だろ?チャラさ??」
「フザケている割に、吹っ切れてねぇんじゃねぇの?」
誰もパロマのお願いを聞いてはくれない。
青くなったパロマは完全無視されて、あーでもない、こーでもないと3人だけで話が続く。
「足りないって言ったらやっぱりこれじゃない?」
「ちっちょっと!なな何するんですか!!!」
お遊びモードに突入した3人に絡まれ、パロマはディーによって両ほっぺに赤いインクで、グルグル模様を描かれた。
「それだ!正にそれ!こいつに足らなかったモノは!!!」
「ぶあはは!お前はこれから『ニンニン』としか喋れないんだからな!これは僕達を騙した罰だ!!」
「試しに言ってみよ〜ぜ?ほら。」
「・・・・・・・ニンニン。」
パロマを除いた他3名は、腹を抱えて大爆笑だ。しかし3人の悪戯はまだまだ止まらない。


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bkm


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