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言いたい事は次から次へと溢れてくるのに、素直に育ってきていない兄弟は一つも言葉に出来ない。
その代わりに、
「いつまでそんな所でボサッと突っ立ってんの。さっさと中に入んなよ。」
「廊下から入ってくる風が傷に染みるんだよね。ちょっとは気を使ってくれる?」
と、可愛げのない事を告げた。けれども、双子の伏せ気味の顔は真っ赤になっているのが隠しきれていない。
「ただいま。ディー、ダム。」
パロマはやっと微笑んだ。
二人に誘導されて、扉から中へと入る。
広々とした廊下を抜けると、開放的な応接間が姿を現した。城内の客室でもここは貴賓室に相当するのか、アリスと居た部屋とはまた趣が違い、シンプルなデザインで纏まっているが、部屋を飾る調度品の数々は、すべてが厳選された一級品ばかりだと一見しただけでも分かる。
そして、応接間からは別の廊下に続く扉があり、まるでこの空間だけでも一戸建ての洋館の広さに相当する。
あんなに仲違をしていたのに、対応はビップ扱い。パロマはその矛盾に首を傾げた。
すると、
「おおっパロマ!お前ホンットに帰ってきたのか!!何だよ、捨て犬は拾い主を忘れてねぇな。」
応接間の窓際からズンズンと近づいてきたのは、エリオットだった。
大声を出されてビックリしているパロマの頭を、ガシガシと痛い位に撫で回す。
審判の間では、銃弾が引っ切り無しに彼を狙って襲い掛かっていた割に、彼の外見は頬に擦り傷がある程度で、至ってピンピンとしていた。
パロマは驚きが収まると、今度はブワッと罪悪感が溢れ出した。
「エリオットさん、理由も言わずに逃げ出したりして、本当にごめんなさい。」
彼の目の前で逃亡を計った悔恨の念で、深く深く頭を下げる。申し訳なくて顔を上げられなかった。
萎れるパロマをマジマジと眺めたエリオットは、
「その話は後できっちり白状してもらうが・・・それよりもお前、その服何だ?ウケ狙いか?どこ行きゃそんなん手に入るんだ。」
パロマの頭上から降ってくる声は、どこか愉快げで非難する響きが全く無かった。
「・・・・え・・・・」
思わず前を見ると、やはりエリオットは笑いを含んだ顔をしていた。
(怒ってないの?)
怒りは感じないが、逆に笑った顔がにこやかと言うより・・・
おちょくっている部類に近い。
・・・と言うか、そのまんまだ。
「そうそう、カッコいいんだかダサいんだか、でも何か足りないんだよね〜。」
正面の廊下から扉を開けて部屋に入ってきたダムが、エリオットの言葉を付け足した。


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bkm


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