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アリスと話を終えたパロマが次に通されたのは、帽子屋屋敷の滞在者に与えられた一室だった。
ドキドキと胸を鳴らしながら、一度大きく深呼吸する。
それから意を決してドアをノックした。ドアノブに手を伸ばすと、掴む前にドアがバッと開いた。ビックリしているパロマの目前にいるのは、ディーとダムだった。
「パロマ!お前っ、遅過ぎ!!」
「何やってんだよ!これ以上説明がいる様な事を自分で増やすなよ!!!」
ドアノブを握ろうとした格好のままで、カチンと固まっているパロマに対する第一声は、雷だった。
カンカンに怒る彼らの袖先からは、血で汚れた包帯が痛々しくも見えていた。ダムは唇が腫れあがり、ディーに至っては帽子で隠してはいるが、頭に真っ赤に染まった包帯を巻いている。パロマは自分が酷く痛み出した様に表情を歪めた。
「ごめんなさい、二人とも・・・。すごく、痛いでしょ?怪我は大丈夫?」
久し振りの再会なのに、真っ先に傷の心配をするパロマ。
「頭は?ちょっ良いから、帽子を取って下さい!ヤダ、すっごいタンコブが出来てる!!骨は?どこか曲げられない所とかありませんか?!胸が苦しいとかは?!フラフラしません??」と怒り狂っている双子に対して、弁解もすっ跳んでオロオロと二人の身体中を勝手に触れまくる。動きがおかしいパロマに、二人は目と目を合わせた。
お互いの視野に入った相手の顔は、何とも言えない、やるせない表情をしていた。


もう怒ってなんか、いられない。


そしてもう一度パロマを見詰めて、スカッとした表情になった。二人共今までの苛つきがスッとどこかへ飛んで行った。
まだベタベタと触ってくるパロマに、ちょっと頬を赤くしたダムがその手をペシッと払いのける。
「べっ別にお前が負わせた怪我じゃないだろっ」
「掠り傷程度で大げさなんだよ。」
ディーが少し体勢をずらして、最も深手を負っている左の肩から上腕部分をパロマの視界から遠ざけた。
「掠り傷なんかじゃないっったら!!もっと自分を大事にして!どれだけ心配したと思っているのよ!!もうバカっ!!!」
双子以上に逆上したパロマは、それでも口だけは元気な二人を見て、目に涙を溜めて安堵した。そんなパロマを見たディーとダムは、開き掛けた口を閉ざす。




―――お前が帰ってきさえすれば何でもいい。
パロマの顔を見られたから、痛みなんか飛んでいった。
泣き顔じゃなくて、可愛い笑顔を僕達に見せて―――





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bkm


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