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ニコニコしたブラッドが、そう話し出した。
パロマはそれを聞いてハッと息を飲んだ。
無実が証明されたのかと、ブラッドを大きな目で見つめる。
「限りなくクロに近いが、状況証拠が不十分だったのでな。ジャック・クロフォードは君の事は知らないという。煮るなり焼くなり好きにして良いそうだ。」
やはりこの男性は、誰かに向けて脅迫状を送ったらしい。しかしその誰かも、知らない人とはいえ、その返答はあまりにも非人道的ではないか。
パロマは『煮るなり焼くなり』の所で、カッチンコチンに固まった。
「そして物的証拠もない。使われたであろう武器が、何処を探しても見つからなかったのも理由の一つだ。」
(これは・・・・やっぱり・・・!)
パロマは話が段々明るい方向に向かっているのが、嬉しくて仕方がなかった。
晴れて汚名返上。やはり揺ぎ無い真実が、明るい未来を創る。
無意識の内に期待した顔で、ブラッドの次の言葉を待つ。


「君は晴れて、自由の身だ。」


ブラッドは片手を広げてドアの方を指す。
すっかり笑顔になって、パロマは頭の中で万歳三唱だ。
パロマは『逆転無罪!』と書かれた紙を掲げて、外に走っていきたい気分になった。
「良かった!!それじゃ、私は帰れるんですねっ」
喜んでいるパロマだったが、不意に影が刺した。向かいの席に座っていた筈のエリオットが真後ろに立っていて、パロマはヒヤッと肝を冷やした。
気付くと、開いていた筈のドアが・・・重く閉ざされていた。
「??」
頬杖をついたブラッドが愉快そうに話を続ける。
「しかし、君には余罪が残っている。建造物等損壊罪、傷害罪、さらにこの前の取引で私が手にするはずだった多額の報酬、崩壊してしまった建物の修繕費、そして、まだ怪我が癒えていない部下達の治療費。―――そう、君には巨額の債務があるのだよ。」
パロマはビックリして声も出せない。
エリオットに両肩を捕まれ、怖さにビクっと縮こまった。
「お前は一文無しみてぇだから、帽子屋敷の使用人っつぅ名の『奴隷』だ。良かったなぁ?」
エリオットが悪人面の歪んだ笑みを浮かべながらそう言い放ち、パロマを強引に椅子から立たせる。
「えぇ?!どどどどういう事ですか??」
釈放と言われたり、奴隷と言われたり、パロマの頭の中は完全にパニックだ。


「お前は囚人から奴隷に格上げだ。これからは借金返済に向けて精々精進しろ。」


エリオットに引きずられるように出ていくパロマを、ブラッドは笑顔で手を振って見送った。


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bkm


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