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パロマとアリスが、仲良く雑談をしている頃、
城の敷地内へと続く正面の門の前では、気の早い招待客を乗せた馬車が長蛇の列を作っていた。
門の警備兵が一台、一台、招待状の有無と偽造品ではないかのチェックを念入りに行 っているが、まだ門は固く閉ざされている。
城外は馬の嘶きと、ガヤガヤとした話し声で騒々しい位だったが、
正門より遥か遠い城内は、それ以上の騒がしさだった。
女王の許可待ちだった会場準備が、やっと姿を現した彼女のゴーサインが出て、急ピッチで進められている。
正面玄関は真新しいビロードの絨毯が敷かれた。パッと華やかになり、さらに煌びやかに飾り立てられていく。
調理場では、今が正念場とコックたちが忙しなく動き回り、極めて上品な料理が次々と仕上がっていく。
出来あがった料理達は湯気を立ち上せたまま大皿に盛られ、今度は絶妙なバランスで大きなワゴンにてんこ盛りに乗せられる。
それをメイド達が引き継ぎ、ワゴンを押して調理場から出て行く。一人の行き来の回数も、その仕事に従事する人数も多過ぎて計り知れなかった。
彼女達の焦る姿は時間が気になるのか、いつもは女王に見習って行儀良く歩いているのに、誰もが足早にガラガラと音を立てて押していた。
カチャカチャと食器の揺れる音や人の走る音が、城内に絶えず飛び交う。
急いでいるのは何も彼女達だけではない。
長い廊下の両脇には、等間隔に大人と等身大の大きな花瓶が設置され、城の装飾を一任されていた専門家が、大量の兵士を引き連れ「ああしろこうしろ」と、大輪の薔薇のデコレート具合を微調整している。
他の兵士達はすれ違いざまでもリスト同士を点検しあい、洩れが無いか最終チェックに余念がない。
噎せ返る程の豊潤な薔薇の香りが充満する廊下に、楽の調べが。
交響楽団の演奏部隊が、各々の楽器を持ってチューニングを始めたのだ。長く行われるダンスの為に、ワルツの楽譜は束になって譜面台に乗っていた。
舞踏会の準備は着々と進められている。正面の警備兵に、開門の命が下された。
誰もが舞踏会の準備で忙しなくしている中、お祭り騒ぎから取り残された回廊が。




今現在、『西の回廊』は武装兵が立ち並び、城内の者にも通行止めとなっていた。





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