22
きっとアリスはそう言うと、分かっていた。
パロマは何も言えなかった。口元がフルフルと震える。口を開いたら何を言い出すか自分でも分からないから、ギュッとくいしばった。
「もう決めた事なの。私は、帰らない。だからこれからはあんたの話よ。」
我儘を言いそうなパロマに、アリスは二度しっかりと言い切る。
「この世界に来たのが偶然でも、迷い込んだのならそれはパロマの人生、あんたが始めたゲームなのよ。そこに私は関係ないわ。私はここに残ると決心したけど、パロマはそうじゃない。」
アリスが少し声を強めて言い聞かせる。それをパロマは黙って聞いていた。
「あんた言っていたわよね。この世界は元いた世界とは違うって。その通りだと思う。諍いや揉め事はしょっちゅうだし、命の危険を感じた事だって1度や2度じゃない。ここは世界観がまるで違うのよ。それでもあんたが残ると決めたのなら、私は歓迎するわ。でも帰るって決めても引き留めたりはしない。」
話口調は見放す感じだが、アリスはテーブルの上でパロマの手を取りギュッと握り締めた。
そんな厳しさと優しさを兼ね持つ彼女は、
パロマが大好きな、アリスだった。
そのアリスが何を思ったのか、プッと吹き出す。
「それにしてもっ、こんな所まで追ってきちゃうだなんて、あんたの執着っぷりも重症ね。尻尾と耳が垂れ下がっているわよ。ホントにもうっ!私が言いたい事、ちゃんと分かったの?」
ちょこっと小首を傾げる姿は、自分が元気を無くした時にアリスが良く見せていた、きっと無意識にやってしまう仕草だった。
呆れ返っているけれど・・・・突き放したりはしない。
アリスは常に『パロマ』自身を見てくれていた。


(あぁ、私の知っているアリスも、ちゃんと彼女の中にいる。)


「はい。貴方が伝えたい事、ちゃんと分かります。」
パロマは泣きそうになるのを堪えながらも、きちんと返事をした。それを聞いたアリスはパロマの涙に気付かぬフリをして、ニッコリと微笑んだ。
「さぁ、私の話はこれでおしまい!今度はパロマの経緯を聞かせて?あんたの方は何だか大冒険だったみたいじゃない。」
「そうだったんですよ!最初はアリスを探しに丘に登ったのですが―――」
うんうん、とアリスはニコニコとパロマの話に相槌を打つ。
それからしばらくの間は、パロマの体験談で話に花を咲かせたのだった。


prev next

192(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -