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パロマの不思議そうな表情を読んだのか、アリスがパロマを優しく見ている。
「私が不安でおかしくなった時・・・気付くと、いっつも彼がいたの。」
アリスの独白は穏やかに続く。
「ホント今考えたら狂人的なストーカーっぷりだとは思うんだけど、ハッと気付くと目の前には心配そうな彼の顔があったのよのね。目が合うと、彼は心底嬉しそうに微笑むの。」
アリスはポケットをゴソッと探り何かを取りだす。
(あ、あれは・・・っ)
パロマも同じ物を持っている。この国に迷い込んだと当時に姿を現したガラスの小瓶だ。何か思い入れがあるのか、アリスはそれを大事そうに撫でた。
「ツンツンして、他人にはすっごく冷たくて。情も無いし潔癖過ぎてみんな黴菌扱いだし、なのに私にだけはどうしようもない位執着していて。弱くて、情けなくって、惨めったらしくて。ウフフ、並べてみると救いようのない人よね。」
悪口を言っているのに、小瓶を見詰めるアリスはとても愛らしい、『パロマの知らない』顔をしていた。
「でも、もっと救いようのない性格なのは私。思い詰めるとすぐ暗くなるし、すっごく後ろ向きだし、ウジウジしているし。・・・ヤダっ、そんなに悲しそうな顔をしないで、パロマ。あんたの事を言っているんじゃないじゃない。」
アリスの自分を卑下する言葉に、本当は被せてアリスの良い所を沢山沢山伝えてあげたかったが、それさえも制された。
「だから、そんな私をね、どんなに性格が悪くってもずるくっても、絶対に離れない彼に、じゃあ私も近づいてあげようかなって、思ったの。何処まで近づけば飽きるのかって試してみたいし。ずっごく鬱陶しいしムカつくしウザ過ぎるけど。」
「・・・・・アリス。」
きっと『試す』と言った所はウソだ。アリスの視線が、そこの所だけちょっと揺れたから。
「パロマ。」
アリスが自分の手元を見ていた顔を上げる。
パロマはずっと見詰めていたから、アリスとすぐに視線が重なった。


「私は、元の世界には帰らないわ。」



「・・・・。」



分かっていた答えだ。





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bkm


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