12
ブラッドに視線を向けていたパロマはボリスによって簡単に捕まり、また首根っこを掴まれて強引に立たされた。
「グ・・・ぅっ!」
「それじゃあ何でさぁ、俺があんなボロクソに言われなきゃなんねぇの。あんたの目が節穴なんじゃないの?」
ボリスは苦虫を噛み潰した様な顔をして、さらにパロマの首を絞める。彼からしてみたら、パロマは大嘘吐きに他ならなかった。喉が締まって言い返す事の出来ないパロマを一瞥して、ブラッドが口を開く。
「何を言われたのか知らんが、それがお前の印象だったというだけだろう。アリスを逃したお前は、それはそれは目に余る醜態を曝け出していたのではないのか。」
ボリスは痛い所を付かれて反撃するのを止めた。
確かにムシャクシャしていたのは事実だ。
遊園地からアリスがいなくなっても、領土内は至る所にアリスがいた痕跡が残っていた。何処を歩いても思い出してしまう。いや、忘れたくは無かった。
しかし、思い出に浸るには自分の胸に出来た傷は癒えてはいなくて・・・。
遊園地にいるのが辛くなって森をずっとさ迷っていた。
そんな時に、発見したのだ。クマに追われて逃げ惑っているこの女を。


ボリスはハァっとため息を吐いて、パロマを拘束した手をパッと開いた。
「くっっ、はあっ!」
パロマは急に自由になった反動でガクッと膝をつく。
「別に良いけど。俺はこんなつまんねぇ女に執着してないし。帽子屋さんは嫌がらせにも引っかからないから、ホンット調子狂うよ。」
言葉にはまだ棘があったが、あんなに殺意ギンギンで睨んでいたボリスが、今までの態度を急に改めた。パロマを手荒に解放するとボリスは身体の向きを変え、今度は視線すらパロマに寄越さなくなった。
パロマには何が引っ掛かってボリスの気が変わったのか分からなかったが、ブラッドが言葉巧みにそれを引き出したのだけは察した。
自由の身とはなったが、破天荒な事続きで身体の力という力が抜けきってしまっていた。パロマは必死で震える足に力を入れる。
(やっ、やっと動けるのに。しっかりしてったら!私の足っ!!)
近づきたかった。
この非常な世界で、手を差し伸べてくれる希少な存在に。
パロマがやっと地についた掌に力を込めて、グッと立ち上がろうとした時、




ドスンっ!!!!
「ひっ!!」
パロマの膝小僧の数ミリ先に、双子のどちらかの斧が鋭く地面に突き刺さった。




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bkm


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