08
「!!!」
銃弾なんて避けられる筈が無い。
パロマはギュッと目を瞑ったら、弾がのめり込む音があらぬ所から聞こえた。
「えっ・・・」
パロマがそっと目を開けると、真っ正面にいるペーターの銃口から煙が立ち上っている。しかし、身体は痛みを発していない。
(外した?!)
音が聞こえた場所、即ち、斜め後ろ方向に首を回す。自分のいる場所を起点として、X字に銃弾が壁にのめり込んでいた。片方は弾丸を中心に壁に亀裂が走り、もう片方は壁に巨大な窪みを作っていた。
(銃の威力が違う・・?二発撃ったんじゃない・・・の?)
パロマに耳に、ペーターの舌打ちが聞こえた。
「ただでさえ耳が被ってうっとうしいのに、これ以上僕を怒らせないで下さい。エリオット=マーチ。」
彼が忌々しげに視線を流した先に・・・
「あっぶねぇ。油断も隙もねぇなあ。」
エリオットが不敵な笑みを浮かべていた。彼の持つ銃も発砲後の煙が立ち上っている。
訳も分からないパロマが、二つの弾痕と睨み合った二人とを忙しなく見比べていると、
「分かんねぇの?あんた、あいつに助けられたんだよ。」
耳元で声がしたので、顔を上げると、かなり近い場所にボリスの顔があった。
「えっどういう・・っ」
「だ〜か〜ら、白ウサギさんの銃弾に、あっちのウサギさんが自分の銃弾をぶち当てて、軌道を強引に逸らしたんだよ。それが無かったら、あんたのおでこに大穴が開いてたぜ?」


 (なっっっっ!!!何ですって?!?!)


そんな神技的な技巧があるのか。パロマは思わず自分の額を両手で隠した。ボリスとパロマのやり取りとは別に、睨み合ったウサギ同士の間でも話は進んでいた。
「これ以上邪魔立てするのなら、こちらにも考えがありますよ。浅はかな行動を取った事を、心の底から後悔させて差し上げましょうか。」
「はあ?何ブツブツと言っていやがる。ハッキリ言えよ。肝っ玉ちっちぇえな。」
パロマに何を言われようとも動じなかったペーターが、憎々しげに表情を歪める。
「チッ揃いも揃って帽子屋領土の下衆は低俗でならない。言葉の在り方も満足に理解していない。最早存在価値すらありませんね!」
ペーターの言葉の刃が次々と送り込まれるが、エリオットは堪える訳でもなく不敵に笑った。
「低俗で結構。その俺にぶちのめされて這い蹲るのがテメェの運命だ。」
パロマに掛かった運命の呪縛を解放するがの如く、エリオットがペ―タと対峙する。エリオットはすでに臨戦態勢だ。メガネをキランと光らせたペーターは、冷静さを失い襲いかからんばかりの勢いを見せた。
「望む所です!貴方は元々目触りだったのですよ!!」
「しゃらくせぇ!!死ぬのはテメェだ―――!!」
二人同時に駆け出し、相手に向けて銃を発砲する。
急に始まった銃弾戦は、初番から激しいデッドヒートを繰り広げた。


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