02
パロマはというと、
「あ・・・っ」
ボリスから解放されたのも気付かず、棒立ちのまま入り口から目が離せなくなっていた。
瞳を大きく見開いて、やっと微かな声を漏らした。
ボリスによって撃たれた両開きの扉の片側が、丁度上部の蝶つがいに銃弾がヒットしたのか、下だけでは支えきれずに、斜めになってギコギコと揺れている。
もう片方は、投げられた斧にぶつかってしまったのであろう、ものの見事に大破していた。
外形が変わってしまい、さらに見通しが良くなった出入り口。そこから続く長い回廊。
その奥から、この場所へと駆けてくる赤と青のコントラストが・・・。


いつも携帯している斧は今しがた牽制の為投げてしまったからか、手には武器を持ってはいない。しかしすぐさま懐から鋭利なナイフを取り出して、既に起きて立ちはだかってきた兵士達を瞬時に撃退する。回廊の左右には、兵士がゴロゴロと転がっていたが、彼等はナイトメアの催眠にかかっているのではない。倒されたのだ。
二人はパロマが自分達を見ている事に気が付き、歯を見せて笑った。


その斜め後ろには、煙を吐き出す銃を持ったオレンジ色のウサギ耳の男が、斬りかかってきた兵士を片足で蹴り飛ばし、ついでにパロマの方角、正確にはボリスに向かって照準を合わせて発砲する。ボリスからすぐさま反撃の銃弾が撃ち込まれたが、難なく回避していた。近くの敵を軽くあしらいながら、これ以上パロマに危害がいかない様にと同時に対峙している。その素早さは尋常ではない。あれは深く考えずに直感で行動している。場馴れし過ぎていて、パロマは目を見張るばかりだ。
そしてその間を縫って、ゆっくりと姿を現したのは―――


深く被った帽子は彼の表情を隠しているが、口元には微笑が浮かんでいる。
それは、パロマが彼と初めて会った時を思い出させる仕草だった。
手に持ったステッキが、瞬く間にマシンガンへと豹変する。
すると、彼等の後ろまで迫ってきていた兵士達は、ビクッと震えて竦み上がった。恐怖で動けないのだ。構えた剣がブルブルと左右に揺れて、無防備な背中を見せていると言うのに、振り下ろす事が出来ないでいる。
雑魚には全く見向きもしないで、前へと進む。
帽子の鍔から覗く、怪しい光を宿したターコイズの瞳。
その瞳の強さは、初めて会った時とは比べ物にならない位、パロマをグッと引き付ける。
その鋭い視線が、パロマのそれと重なり合った。






「パロマ、お前はこっちに来るんだ。」






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bkm


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