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「―――ではエリオット、頼んだぞ。」
ブラッドは仕事部屋に戻ると、すぐに任務をエリオットに言い渡した。
敵が襲撃に備えて終結しているというのに、二人はどこか余裕の表情だ。逆に契約が破談になって、喜んでいるとも取れる。
「あぁ、わかった。それじゃあ3時間帯後、門の前に手下共を集めておくぜ。」
そう言って、エリオットは大きな音をたてながらドアを閉めて出て行った。
ブラッドはふと机の上に置いてあった書類を手に取った。それは今回の事件の詳細が明記された報告書だ。いまは牢獄に戻された、あの少女の細部の情報が乗っている。


本当はすぐさま殺すつもりだった。


ブラッドは自分に反旗を翻した者には容赦をしない。
思い通りにならないのなら、すべて始末していいと思っている。
そして、それを確実に実行してきた。例外はない。
今回は小娘が1人が立ち向かってきたと聞いて、どんな女か少々興味があったので、生かして連れてきたが、それでも即刻始末するつもりだった。別にどこの誰だろうと関係ない。愚かにも刃向うなら、一人だろうが百人だろうが、すべて同じ道を辿らせる。
しかし、牢獄に足を運ぶと、隅に丸まる様にして眠る汚れた女がいた。



―――あれは、余所者だ。



どうやってこの国にやってきたのか、いつからいたのか、全く気付かなかった。
(私が気付かなかった位だ。おそらく誰も知りはしないだろう。)
ブラッドは考えをあっさりと改めた。
その泥に塗れた少女に、さらなる興味が沸いたのだ。
彼女の今にも消えそうな小さな命をすぐには取らずに、その場から立ち去った。
椅子に拘束され、尋問に耐える彼女は艶やかなブルネットの髪、すっととおった鼻梁をして、少し幼さは残るが、目を見張る美貌の持ち主だった。
脅えた顔で大きな目に涙を溜めながらそれでも睨んでくる少女は、何だかいたいけな小動物に襲いかかるオオカミにでもなった気分にさせられて、いたく楽しかった。
そう、愉快過ぎてゾクゾクした。


「・・・パロマと言ったか―――。当分退屈しなくて済みそうだ。」


ブラッドは残忍な笑みを浮かべて、手にした書類を破り捨てた。



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bkm


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