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パロマは一度見てから、またゆっくりと、本当は戻したくはなかったが、ビバルディに視線を戻す。
パロマを絶えず睨む彼女は、これ以上ないと思っていたさらに上を行く怒り狂った顔をしていた。兵士が続けて話出す。
「そこの罪人が小汚い子袋を隠したその陶器の中身、それは我らの女王様が惜しみない愛情を注ぐ紅茶の、しかも魔の大洪水で茶葉の生産が激減した時間帯の、奇跡的に採れた貴重な、非常に、大変高価な、替えの効かない茶葉だったのです。」
(は・・・はいいい???)
それを聞いて、エースは呑気にポンと手を打ったが、パロマはザ―ッと青ざめた。ビバルディの怒りが依然とグラグラと煮え立っている。
「おぬし等のくだらん会話のお陰で、またもや腸が煮えくりかえったわ!!この怒り、どうしてくれよう・・・・・」
火を噴くドラゴンの如く怒り狂うビバルディ。
エースが「怒るのはこの子だけにして〜。」とヘラヘラ笑いながら、パロマの背中をぐいぐいと押してきた。
(こここ怖い!たかだか紅茶の茶葉位で、こんなに怒るものなの?!)
しかし、自分だって他人には大した物でもない紙一枚が、何より大切だったのだ。一概に人の事は指摘できない。パロマは自分の怒りと恐怖はグッと堪えて、ビバルディに深々と頭を下げた。
「じ、女王様の大切な物とは知らず、軽はずみな事をしてしまい、本当に申し訳」
「黙れ。」




―――ひぇぇぇぇっ




謝る事すらさせてはくれない、口から火を吐くビバルディ。
しかし、ここで己の罪をうやむやにしては駄目だと、心の中で自分を叱咤した。
「どの位時間が掛かるか分かりませんが、せめて駄目にしてしまった分は弁償させて下さい!」
「黙れと言ったのが、聞こえんのか。」
ビバルディの表情がどんどん怒りで歪んでいく。パロマはへっぴり腰になりつつも、なお震える声を無理やり発した。


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bkm


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