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パロマが硬直している間に、ビバルディーが更にビリビリと破いてしまって、紙は無残にも切れ切れになっていく。
ハラリ・・・・
「あぁっ!それはっ私の貴重な、心の拠り所だったのに!!」
ハラリ、
ハラリ・・・・
ビバルディの細い指の合間から、白い紙クズが舞い落ちる。
パロマは涙目で床に落ちた無残な紙きれを見詰めた。震える手を伸ばすが届きもしない。紙は千々になって床に散らばり、もはやアリスの写真は原形を留めてはいなかった。
「まさか、あれで君の大傑作だったとは!ホント裏切らないね〜。」
まだエースは人の事をバカにして笑っている。パロマの身体が小刻みに震え、大きな瞳を悔し涙で濡らし、そして彼女は怒りに我を忘れた。
「どこまで人を笑いものにしたら気が済むんですか!こればっかりは許せません!!貴方は馬鹿にしますが、私には大切な物だったんですよ?!」
「そんなに大切な物なら、肌身離さず持っているべきだろ。君って注意力が足らないんじゃないの。簡単に他人の手に奪われて、心の拠り所が聞いて呆れるね。」
「持っていたんです!ついさっきまでは!!まさか、破り捨てるだなんてっ」
「今更過ぎた事を悔やんだって、ダメになったのならしょうがないだろ。そういうの何て言うか知ってる?『後の祭り』って言うんだよ。」
「やかましいわ、エース!!!生意気をほざくな!!!!」
パロマとエースの喧嘩に、思わぬ所でビバルディが参戦してきた。
彼女の存在を忘れていた訳ではないが、エースに再度口答えしようとしていたパロマは、突然の割り込みに驚いてその言葉を飲み込む。ビバルディはその透き通る声を、廊下中に向かって張り上げた。
「それが出来れば無能な護衛はいらぬのだ!!」
彼女の後ろに控えていた兵士達が、明らかに竦み上がった。ビバルディはそんな彼等を一瞥してから、またもや私怨を込めてエースを睨みつける。
「お〜の〜れ〜っこやつの首を掻っ切ったら、次はおぬしのその無礼な首を、遥か彼方に飛ばしてやるから覚悟しておけ!!! 」
指名されたパロマとエースは、二人共ビックリして女王を顧みる。どうしてこんなにも、彼女が激怒する必要があるのか。
すると、ビバルディの後ろに控えたもう1人の兵士が、コホンと一つ咳払いをした。
「え―、女王様がおっしゃる大事な物、それは即ちこの部屋の陶器の中身、紅茶の茶葉なのです。」
パロマが兵士の指示した場所に目を向ける。それはパロマの背後、元いた部屋でもある、白い陶器が壁全体に収納された部屋だった。


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bkm


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