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なりは忍者なので忍び足で牢屋から抜け出すと、ぐっすり眠っている兵士の傍を恐る恐るカニ歩きした。
今のところ起きる気配は無い。
隣の牢屋を恐々覗いてみると、そこには可愛い鼠が一匹いるだけだった。
バッチリ鼠と目が合って、襲われてもないのに、白のポーン宜しくパロマの背中が反り返る。
穴から出てきた鼠はあたかも本物そっくりに鼻をヒクヒク動かしては、まるで食べ物を探しているみたくフラフラとさ迷っている。
(あ、あれが魔物なの?!ナイトメアさんが変化できるって言っていたから、鼠に化けて逃げようとしているのかな・・・)
触らぬ魔物に祟りなし。
パロマは一言も言葉を漏らさぬよう両手で口を覆って、何故か息も止めたままその場を後にした。ナイトメアが見ていたら、今頃腹を抱えて爆笑していた事だろう。
スタタタと忍者走りで階段を駆け上がると、ばったり倒れた兵士の腕が階段に垂れさがっていたので、思わず全階段を転げ落ちそうになった。
寝ていると分かっていても、不自然に倒れているので、まるで息をしていない様で心臓に悪い。パロマは激しく動く胸を抑えつけた。
ゆっくりと、ゆっくりと階段から廊下に顔を出す。
やはり廊下にも倒れた兵士が転々と見付かる。どうやらナイトメアの威力は本物だったようだ。
「ナイトメアさんって、本当はすごい人だったのね・・・。」
と、そこでバチッと隣に位置する扉に目が向かう。
スル―しろと言われても、『バリア』『宝部屋』の言葉がパロマを引き付けて止まない。
近くにある扉と言ったら、そこしかない。
先へと急がなければならない我が身ながら、そろそろと足はどうしてもその扉に引き寄せられてしまった。扉を警備していたのであろう兵士の寝顔を踏みつぶさない様に気を付けながら、パロマはソロリソロリと扉まで近づく。
バリアが張ってあるとは思えない、普通の扉だ。しかも、さらに奇妙な事に、


『入っちゃダメ!』


と、赤とピンクのハートマークが散りばめられた、可愛らしいプレートが掛かっている。


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bkm


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