13
「何だろうこれ・・・・宝物庫だったら、確かに入っちゃ駄目なんだろうけど。」
一国の城の宝が収容された部屋だ。厳重に厳重を重ねていても不思議ではないのに、これでは一般家庭の思春期の少女の部屋と大差が無い。
そして、パロマは扉の隣に大きなレバーが付いている事に気が付いた。もしかして、もしかしたら・・・
「こ、これは、バリアの解除レバーじゃ・・・っ」
普通に考えたら、もし侵入防止のバリアが必要ならば、目立つ所に解除レバーなんかある筈がないと分かるのに、時間に追われ敵を怖がるパロマには、冷静な判断力が欠けていた。こんな所でもナイトメアの嘘八百に踊らされているパロマだった。
恐る恐るレバーをタッチすると、ビリっとは来なかった。それで気を大きくして、パロマは思い切ってレバーを持ち上げる。ちょっと力を加えただけで、思いもせず上に上がり切るレバー。
ガゴンッ
レバーの音だけでパロマはビクッと竦み上がり、後ろで寝ていた兵士に躓いて、勢いついでに半回転した。受け身も取れなかったので、腰がダイレクトに悲鳴を上げる。
「いっっったたたっ・・・ああっ!どどどうしよう、起きちゃった?」
慌てて起き上り、兵士の顔を確認しに行くと、未だスヤスヤ熟睡中だった。これで自分の痴態は闇に葬られると、パロマはホッと胸を撫で下ろした。
それから体勢を直してじっくりと扉を見ると、何と明りが扉の隙間から洩れている。

「あれ?もしかして。」
もう一度レバーを下げれば、隙間の明りが無くなった。
単なる電気のスイッチだったのだ。
パロマはガク―っと力を無くして、思わず扉に寄り掛かる。すると、ちゃんと締まっていなかったのか、扉はパロマの体重に押されてそのまま内側に開いてしまった。
「きゃああっ・・・・あ、あれ?」
やはりビリビリしない。
すると、廊下の明るさで中にいた何かが、ギラギラとパロマを睨みつけた。
「いやっ!なっ何?!」
腰を抜かしたまま後ずさってレバーをまた持ち上げると、
「え・・・・っ」
バッと明りが付いた部屋には、ネコやウサギやコイヌの
「ヌイ・・・グルミ?」
可愛らしい人形達が、所狭しと並べられていた。
ライトブルーの清楚な部屋に、曲線の美しい華奢な白い家具が取り付けてある。テーブルには籠に入った仔猫達。椅子の上には、モコモコのテディーベア―が乗っていた。
一歩部屋に入り、パロマはまるで別世界に迷い込んだ錯覚を受ける。
中央に置かれたガラス張りの特段に大きいコレクションラックは、部屋のどの角度でも楽しめる様に、六角形を模している。
12段もの仕切りがついていて、そこにも沢山のヌイグルミ達がパロマに瞑らな瞳を向けていた。
一体一体が精緻な作りで、きっとその感触は夢の様な触り心地だろう。それが、これ程勢ぞろいし、すべての視線が自分に注がれている。それだけでも圧巻だった。
しかし、だらからと言っても・・・
「これがお城の宝物、なの?宝石とか、絵画とか、黄金とか。何かもっといろいろ・・・・・ハッ!いっけない!!時間無いんだった!!!」
パロマは興味心を押し殺して、静かに扉を閉めた。



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bkm


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