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夢から目覚めたパロマは寒さで身震いがした。
ほんわかとした夢の中と違って、現実は厳しい。石を切り崩したような牢屋の中は、凍てつく寒さと虫が這う様な気持ち悪さを持ち合わせていた。
パロマは自分の身に腕を絡ませると、何だかゴワゴワとしたさわり心地に気付いた。
今まで着ていた制服ではない。
「えっな、何っ?!」
飛び上がって、ワサワサと自分の体に手を這わせてみる。
暗がりでも分かる、真っ黒い装束。
分厚い生地で作られたそれは全身を黒く覆い、腰に帯が巻かれて手には手甲、足には音を消すための足袋、首には顔に巻くための口当てまである。
髪は律儀に頭部の高い所で一つに縛ってあった。
(何これええええっ?!)




完全なる忍者スタイルだった。





パロマは力を失いガクッと四つん這いになった。
夢の中でのナイトメアの言葉を思い出す。あの時、マントの事で激しく叱ったら、彼は言っていたではないか。
『今度はちゃんとした物を用意するからっ』と―――
まさか、これが、ちゃんとした物?!と見詰める両手は黒装束に包まれて、信じられないとプルプルと震えている。
(ナ、ナイトメアさんってば―――っ!こんな所でも遊んでえええええ!!)
すると、近くからグォ―ピュルピュルピュルピュル〜という大層可笑しな音が聞こえて、パロマの身がビクッと縮こまった。
鉄格子に近付くと、足元には可愛い茶色い犬が骨を咥えたままお腹を出して、幸せそうに寝ていた。あの音はどうやらこの子のイビキだったのか。犬の顔側に鍵が落ちているのを発見して、パロマは現状を思い出した。サッと視線を辺りに巡らせると、数人の兵士が全員地べたに寝転がり微動だにしない。




―――もう、始まっている!!





ブラックの駒の動きが止まった。動ける駒はホワイトポーンただ一人。
もはや一刻も無駄には出来ない。




すぐさま立ち上がって鉄格子から腕を伸ばし、鍵を手にしたのだった。




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bkm


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