09
街の人々も、ユリウスもそうだったが、ナイトメアも例に違わず王についてはどん底の低評価だ。まかりなりにもこの城の天辺に位置する人物ではないのか・・・。
ナイトメアが何かを握る様な仕草をすると、フッとブラックのクィーンと取り囲んだポーン達の姿が消えた。ホワイトのポーンがひょっこり顔を出し、辺りを見回しながらそろそろと前へ進む。
「ビバルディが必ずしも謁見の間にいるとも限らんし、そこは神に祈るしかないな。もし奇跡的にもその場を通り抜けられたとしたら、2番目の扉を開けて廊下に出るのだ。すぐにある螺旋階段の側を左に折れ真っ直ぐに進めば『西の回廊』だ。そこはそこで、またすばらしい絵画が―――」
「お城の装飾についての説明はもう結構です。そこに回廊があるのですね。」
パロマが口を挟んできたので、ナイトメアがつまらなそうに口を尖らせた。きっと回廊についても、長ったらしい解説が用意されていたのだろう。そんな話をずっと聞いている間に、夢から覚めてしまったら元も子もない。
「チッ、つまらん。そうだ、そこが『西の回廊』だ。ちなみにその先にあるのは円形の行き止まりだから、袋小路に陥るからな。―――何?そこで捕まったのか!パロマ、君は『審判の間』に入ったのか!!あそこは先々代女王が一番可愛がっていた妾の裏切りに業を煮たし、白状させる為に作ったのが始まりだ。6体の甲冑が見下ろしていただろう。あぁ、分かっている、説明はいらなかったな・・・。そうだったのか〜、あの恐懼の間に入ったのか。羨ましい・・・。」
まるでお城見学に来た観光客の様なナイトメアと、そこで逃げ回り牢屋に閉じ込められたパロマに激しい温度差が生じる。ポカポカと空想に耽るナイトメアを、氷河の様な冷たい眼差しでパロマは睨んだ。
「もういいです。大体の事はわかりましたから。そこから戻って螺旋階段を使って上階に上がればゴールは目前と言う事ですね?若干この激しく動き回っているナイトと、常にアリスに近い場所をキープしているビショップが気になりますが・・・。」
パロマは恐る恐る駒達に目線を戻した。ナイトはいきなり走り出したと思ったら、今度は逆側へスキップしだした。周りの駒の動き等気にもせず、独自スタイルを突き進んでいる。ビショップは白のクィーンが一歩動けば同じく一歩動き、二歩動けば、三歩動いてさらにクィーンとの距離を詰めようとしていた。すると、ビショップとクィーンの周りにいたポーン達が急に騒ぎ出して、一列になって動き出す。
(?)
パロマが不思議に思ってその行動を見守っていると、どうやら他のポーン達も列を組んで同じ方向を目指していた。パロマは視線を先回りさせると・・・・
そこには、必死に逃げ惑う白のポーンがいた。


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