09
「取引の場所と時間帯を何故知っていた?」
アリスの家庭教師は銃口を向けたまま、口に微笑みを浮かべてパロマに話しかけてくる。
しかし、彼は笑っている様で、目は全く笑ってはいなかった。
(あれ、アリスの家庭教師の名前って、『ブラッド』・・・だった?)
パロマは震えながらも何とか思いだそうと、眼を閉じて考えた。
「えっあの、時間・・は以前に聞いていたので。お仕事のお邪魔をするのは、申し訳ないと思って・・・遠慮していたんです。・・・お声をかけた方が良かったですか?」
パロマはアリスの勉学の邪魔をしない様に、会いに行く時は頃合いを見計らっていた。だからアリスの屋敷から出てくる彼を、数回見かけた事があったのだ。
大概彼は先を急いでいたので、すれ違いざまに屋敷に訪れる自分の事は、きっと知らない筈。彼にとって、自分が初対面なのは分かる。


しかし、銃を向けられる理由は分からない。


パロマは自分の発言が正解なのか不正解なのかも分からず、もはや心臓は爆発寸前だった。
(・・・何で家庭教師さんが銃なんか持っているの。しかも何だか一番偉そう。家庭教師は紹介制のはずなのに・・・?)
銃口から目が離せず、ガタガタしながら震えていると、
「それでは、直接襲撃するチャンスを狙っていたと言うわけか。虫も殺せなそうな顔をしながら、空恐ろしいお嬢さんだ。」
「?!」
部屋の中に別の人物が入ってきた。畏まった姿勢とその話し方から、彼らの部下のようだ。
「ボス、事件現場の検証の結果、アジトが崩壊したと同時に、何人もの構成員が逃げて行くのを見た者がいます。それはどうやらジャック・クロフォードの配下の様です。」
部下らしき人物の報告で、ウサギ耳の男性の機嫌が明らかに悪くなった。
目の前の椅子を、乱暴に蹴り倒す。痛々しい音と共に、椅子が激しく崩壊した。
パロマは動けないながらも、肩をビクッと震えさせた。
「チッ!こいつはあの新参クソジャックの回し者で100%確定だな。最近いい気になってやることもでかくなりやがって。―――そうとわかりゃ、こんな奴早くやっちまおうぜ、ブラッド!」
「そんなに急かすなエリオット。きっとまだ情報を持っているはずだ。・・・お嬢さん、ジャック・クロフォードは知っているだろう?」
パロマには目前の人達の会話が、本当に理解できない。
彼らの世界の中で、自分が何処に係っているのだろう。パロマは、念の為見知った男性の名前を思い浮かべてみた。
(学校にそんな生徒がいたかしら。ジェイク・・・ジム・・・ショーン・・・?)


「あ、あの、・・・もしかして先生ですか?」




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bkm


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