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「お前がこの世界にやってきた時は、中央に位置するこの塔に降り立っただろう。あいつはそうじゃなかった。恐らく歪んだルートを辿ってきたんだろう。」
急に現実に戻されたアリスは、急いで姿勢を正して、目の前に出されたコーヒーのお礼を言う。
「歪んだルートって、何処にあったの・・・?あの子って全寮制の学校にいたのよ?そんなに行動範囲は広く・・・・あ・・・・。」
何かを思い出したのか、アリスは話途中で会話と止めた。
「もしかしたらあの子、私を探しに来たのかもしれない。買い出しに来ていたあの子と街で良く会っていたのよ。私の姿が見えないから、誰かに聞いて丘まで行ったのかも。」
「そうだとしても、お前が通った穴は塞がっていただろう。夢魔にはあれだけ散々『塞いでおけ』と口を酸っぱくして・・・・・・おい、まさか・・・。」
ユリウスのこめかみに血管が浮き出る。アリスもカップの持つ手がプルプルと震えて、今にもカップを握り潰しそうだ。
「その、まさか・・・なんじゃないの?」
「塞ぎ忘れか。時間が経てば古くなったルートは歪みが生まれて、道理で帽子屋領土なんかに落ちる訳だ。」
「あんのボンクラ夢魔めぇ〜・・って、その前に帽子屋領土って何?!どう言う事っ?!」
「帽子屋屋敷に滞在していたんだ。あいつは。」
たっぷり数秒、二人は見詰め合う。
「・・・何で・・・?帽子屋屋敷・・・?」
「そこまでは知らん。」
カップが割られそうだったので、ユリウスはそうっとアリスの手からカップを奪った。そしてそれをテーブルに乗せて、話を続ける。
「まぁ、落ちた場所は推測に過ぎない。しかし、滞在していたと自分で言っていたから、そうなのだろう。ただ、どう言った扱いを受けてきたのか・・・。決してお前みたいな手厚い『余所者』待遇は受けてはいなかったみたいだぞ。」
パロマの話口調、エースの話題に怯えていた態度、そしてその後の行動はまるで逃げるかの如く何かに追われていた。どれを取っても、帽子屋屋敷から優遇扱いをされてきたとは到底思えない。
「もぉ〜っっっ!今度夢でナイトメアに会ったら、こってんぱんにしてやるんだからっ!!何も関係がないあの子を巻き込む事ないでしょうが!!!」
怒りの持って行き場所がないアリスは、それを今は会えないナイトメアにぶつける。
しかし、冷静なユリウスはすぐに話を元に戻した。
「どの道、落ちてしまった事には仕方が無い。あいつはこの塔を訪れた時に、帽子屋連中に後を追われていた様だ。屋敷であいつは何かをやらかしたのだろう。」
えぇ?!とアリスは目をまん丸にして驚いている。


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