26
ジャック・クロフォードの部下では無かったのなら、話は全く違ってくる。
一度考えを総ざらいしてみる必要がありそうだ。


パロマが初めて姿を現したのは、取引現場の邸だった。
あの建物の数件先に、その界隈では最も客の入りが多いカジノがある。ジャックがそこの従業員に目を付けたと言うのなら、あの騒動の際にジャックの手下が付近を徘徊していてもおかしくはない。
それに加え、見張りに立たされた男達は、上司の身勝手さを帽子屋屋敷に対する反抗と取られたらと、内心は気が気でなかった筈だ。だから、この男の部下達は近くで事件が発生すると、罪も無いのにいの一番に逃げ出したのだ。
帽子屋屋敷の総力を持ってしても武器が見付からなかったのも頷ける。部下ではないなら、ショートバズーカも持ってはいまい。証拠隠滅の為に、破棄したり隠蔽した訳でもなかったのだ。
では、ショートバズーカを持ってなくして、女一人であの建物を崩壊まで追い込むことが出来たのは・・・。
ブラッドの脳裏にいつぞやのパロマの叫び声がフラッシュバックする。






『私は地面に開いた大きい穴に落ちちゃって、何故か空から落下したんです!あの建物に!!』






(あの時が、あいつがこの世界に来た始まりだったのか。)
そう考えると、時間帯の流れや物理の仕組みについて戸惑っていた事等合点がいく。1人生き抜いてきた訳でも、誰かに飼い馴らされていた訳でもない。パロマはこの世界に迷い込んで、どこにも属さず真っ先に帽子屋屋敷に辿り着いたのだ。
別に帽子屋屋敷に怨恨がある訳でもない、だからどんな罠にも引っ掛からず何も仕掛けるつもりも無かったのだ。
端から疑いの目で見ていた為に、見えなかった真実―――
「エリオット、あいつが逃亡したあの時、何の書類を持ち出したのか、お前覚えているか。」
「え・・・?何だったかは記憶にねぇが、確か枚数はそんなに変わってなかったぜ。」


prev next

122(348)

bkm


top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -