22
屋敷の中の最も奥まった一室に、血に塗れた男達が薄汚れた地べたにうずくまっている。
ある者は大量の吐しゃ物にまみれて、腹を抱えて小刻みに震え、ある者は頭から尋常ではない量の血を流していた。その場にいる誰もが目を覆いたくなる程の重傷なのに、ほったらかしで無惨にゴロゴロと転がされている。
部屋の中は激しい乱闘のせいか、床は抉れて、壁は弾痕が無数に散らばり、ど派手なカーテンはメラメラと下から燃え上がっていた。
「久し振りだな、ジャック・クロフォード。中々顔を見せに来ないから、こちらから出向いてしまったが、悪かったか?」
「わりーよ!!いっででででで!!!!お前これは挨拶する態度じゃねぇだろ!」
そこには冷笑のブラッドがいた。
地面にひれ伏す男の頭を、ギリギリと踏みつけている。大した抵抗も出来ずに踏まれ続けている情けない男は、衣服の至る所が赤黒く汚れ、酷く傷付いている。彼の右頬には真新しい傷が、そしてその深く抉られた傷口からは、真っ赤な血がダラダラと流れ落ちていた。
襲撃されるなんて全く予期していなかったのか、カードゲームの真っ最中だったテーブルは、脚を失いなぎ倒されていて、そこに乗っていたのであろうグラス類は、すべて尖った破片と化して床に散らばっていた。そしてカードが辺り一面に散乱し、飛び散った血が床同様にカードにもベットリと付着している。
部屋にいた乱れた衣装のけばけばしい女達は、ブラッド達が部屋に乱入してきた際に、腰を抜かして這い蹲って逃げて行った。
屋敷の廊下からは、絶えず銃弾と逃げ惑う悲鳴がこだまする。ブラッドの優秀な部下達が、しっかりと任務を遂行している様だ。
「いきなり何なんだっつーんだ、頭から足どけろコラァ!!てめえっ、聞いてんのか!」
足元から凄んでも威力は皆無だ。手足をバタつかせた彼は、まるで水から打ち上げられた魚の様に哀れで、そして惨めだった。
「誰に向かって吠えている。お前に発言の自由はない。今すぐ死ぬか、もがき苦しみながら死ぬか、それ位は選ばせてやろう。」
凄んだ笑みで語られる言葉は、ジャックには理解不能だった。
イカサマが大成功して、今度こそ賭けに勝てそうだったのに、隣にいた明らかに馬鹿にした顔つきのボインの女に、やっと、やっと見返してやれる所だったのに。・・・何がどうしてこうなったのか。
「オレが何やったって言うんだよ!ちゃんとショバ代だって納めてんだろ?!」
裏返った声でジャックが叫ぶ。しかしそんな声さえ楽しげにブラッドは彼の顔を踏みにじった。
「お前の薄汚い端た金の為にこんな蛆虫ばかりが蔓延るゴミ溜めに等、この私が、わざわざ、出向くと思うか?」
ブラッドは、超が付く程不機嫌だった。
しかし、その元凶が惨めったらしくも足元にひれ伏しているので、やっと憂さ晴らしが出来るというもの。血と鼻水と涎でグチャグチャに崩れた表情をしているジャックを見て、さらに踏みつけ顔全体を地面に押し潰す。
「俺は帽子屋敷を裏切ったりしてねぇ!信じてくれよ!!」


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bkm


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