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ブラッドが少し力を緩めると、ジャックが「ブハッ」と息継ぎをし、大量の冷や汗と血を滴らせながら、必死に弁解を求めてきた。
「ほ〜お、お前は何にも知らないと言うのか。そうして自分は偽善者面して、部下に罪を擦り付けるつもりか?」
「な、何の事だ・・・。」.
ジャックが明らかに動揺する。怒り狂った赤から、何かを恐れる青へと顔色が急激に変化した。
ブラッドが的確に何かを指摘した訳ではないのに、ジャックの慌て振りは異常だった。
その場にいるすべての視線がブラッドとジャックに注がれている。
その隙に全身血まみれで丸まっていた別の男が、地面に転がる銃に震える手をこっそり伸ばした。しかし、すぐさまガウンと銃声が響く。
「ぐはぁっ!!」
その男は腕を抱えてのたうち回り出した。銃口から煙を立ち登らせたのは、ドアに寄りかかったエリオットだった。彼は表情も変えずに腕に大穴を開けた男を見下ろす。痛みに苦しむ男の呻き声以外は、辺りはシィンと静まりかえった。
ジャックやその部下達は裂けた服と打撲の跡、さらに血と汗に塗れてドロドロだったが、ブラッドとエリオット二人だけは衣服の乱れも無く、飄々としていた。
力の差はその場を一瞥しただけでも歴然だった。
腕から血を噴き出しながらビクンビクンと痙攣する部下の姿を、動かせない頭で見ていたジャックはガクガクと震え上がる。
「わ、悪かった、オレが悪かったよ!!お前の領地に無断で入らせたのはオレの指示だ!」
「悪いで済むと思っているのがおめでたいな。その壊滅的に愚かな頭脳を使って、どんな指示を出したんだ。」
「そ、その前に頭から足を退けてくれ!いっっ!!あっ頭がっ、割れる!!!!」
退けろと言われて、さらに力を入れて踏ん付ける。許してやる気等、さらさら無い。
「お前、自分の立場を全く理解していないだろう。私はお願いをしている訳ではない。このまま踏みつぶされてみるか?熟れたトマトの様に無様だろうな。」
ブラッドがさらに少し力を加えただけで、ジャックはピタッと動きを止めた。脂汗が大量に噴き出している。確実にブラッドの巧言に翻弄されていた。
「お、おお、女だ!!女の方が悪いんだ!子分達はもう撤退させただろ?!」
「お前の部下はこちらが捕まえてやったんだ。誰一人として生還して等いないだろう?―――女はどうした。」
ブラッドが凍る目線で足元に這いつくばる男を見下す。
「あの女、オレの言う事なんか聞きゃしねぇ。今頃俺の知らねぇ男にでも跨って、媚びて騙して貢がれでもしてんだろ。囲いたくっても手のひら反してどっかに飛んでいっちまう。あいつはそういう女なんだっ。」
ジャックの話し口調では、パロマは疾うの昔にここから去っている事になる。羽が生えていると、根なし草の様に一つの場所には留まれないのだろうか。


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bkm


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