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屋敷の中からは激しいドンチャン騒ぎと、女の甲高い笑い声が絶えず聞こえる。
ブラッドの隣についたエリオットが、忌々しげに屋敷を睨んだ。
「チックソが!あの女が帰ってきて浮かれ放題か。馬鹿にしやがって!」
彼等からしたら、ジャックの一味は帽子屋をひと泡吹かせたとお祭り騒ぎに興じていると見えたのだろう。きっとただ普通に浮かれているだけだろうに。
機敏に動いていた帽子屋屋敷の構成員の内の一人が、二人に近づき姿勢を正した。
「ボス、ご報告致します。建物周辺は既に包囲致しました。裏口、通用口共封鎖済みです。残る出入り口は正面扉だけとなっております。」
「抜かるなよ。鼠一匹取り逃がすな。」
それに対して、ブラッドが冷酷に言い渡す。既に攻撃体制は整っていた。
ブラッドが屋敷全体をさらっと見渡す。2階の窓から、数人の男と着飾った女がチラチラと見えた。
「警備も手薄、古い屋敷はむき出しで塀すらない。張り巡らされた窓は襲撃されたら一巻の終わりだ。何処も彼処も穴だらけで、防衛策がまるでなって無いな。」
―――そんな脳無しが組織する元に舞い戻ったと言うのか、あの女は!!
ジャックの手緩さを気付けば気付く程、パロマにコケにされた気分になるブラッドだった。手に持つステッキはとうにマシンガンへと姿を変えている。
「でもよ、あの窓から身投げされちまったらどうする。そんなんでポックリ逝きやがったら、俺の怒りが治まらねぇ。」
エリオットの手にも既に銃が構えられていた。ギラリと光った銃口は、早くパロマを捕らえたくてウズウズとしている。ブラッド達の後ろに控えた構成員達も、号令の言葉を今か今かと待ちわびていた。
「フッ。そんな失態犯す訳ないだろう。先に潜入させておいた部下に罠を仕掛けさせた。簡単には死ねない様に、安全対策も施してやったさ。」
非情な悪魔がそこにはいた。これから起こるであろう惨劇を思い描いて、不敵に笑う。
「まずは挨拶代わりに、ドデカイ穴を開けてやるか。」
ブラッドの命が下り、控えた部下が大きな武器を構える。ジュッと火を付けると、数秒後、それこそドデカイ大砲の玉が大きな音と共に屋敷に向かって飛んで行った。
ドォンと激しい爆発音が屋敷から響き、ブラッド達の所まで地鳴りがした。激しく大破した正面扉はメラメラと炎上し、周りに火の子を飛び散らせている。すぐさま隣の大木にも火が回った。
「さあ、逃げた鳥を嬲り殺しに行こうではないか。」
ブラッドの瞳が炎に当てられ、赤々と輝いた。

その後屋敷は、突然の襲撃で逃げ惑うジャックの手下達を軽くあしらう帽子屋一味の独断場と化したのだった。


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