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数多の兵士達の鋭い視線が、すべて自分に向っている事を痛感した。
「女―――何をしでかしたか、分かっているのだろうな。」
パロマの喉がゴクッと微かに動く。
「その場で立ち止まり、武器を捨てろ。」
パロマは武器など持っていない事を示すために両手を上げる。
そこからの兵士達の動きは卓越していた。
見事な連携プレイで、パロマを拘束しにかかる。
「い、痛・・・・・っっ」
ギリギリと腕を締め上げられて、パロマは悲痛な声を発した。
「抵抗するな。この場で殺されないだけ有難いと思え。」
パロマのすぐ近くでガシャンと何かが嵌る音がする。パロマは後ろ手で手錠をかけられてしまったのだ。
もう反抗する気もない。パロマの意気が穴が開けられた風船の様にしぼんでしまっていた。
人形の様にされるがままのパロマの傍で、兵士達は各々の任務を遂行する。
「『審判の間』にて侵入者の身柄を拘束。女王陛下は只今城下での所用の為、外出なさっておられる。城にお戻りになられるまで、女は留置所にて収容と隊長に伝えろ。」
パロマは目まぐるしく動く兵隊達を他人事のように見詰める。
すると、ぐいっと手錠の鎖を引っ張られた。バランスを失って倒れると、一人の兵士が冷酷な手つきでパロマを強引に立ち上がらせた。
「歩け。」
そして兵隊に挟まれ、引きずられる様に部屋を後にした。




連れて行かれた先は、長い階段を下りた地下の空洞。
今までの豪華絢爛な佇まいとは一変して、暗く石を切り崩した様な異様な場所だった。道の真ん中は下水が流れていて、悪臭を放っていた。
左右にアーチ型の鉄格子がいくつもあり、そのひとつに手錠を外されたパロマはペッと投げ入れられる。
「きゃあっ!」
ズササッと地面に転がり、体制を整える前にガシャンと無情にも扉に鍵がかかる音がする。大勢いた兵士達は見張りの何人かを残して、ガシャガシャと装具を鳴らしながらその場を離れていく。パロマはその姿を目で追うばかりだ。


何もない四角い空間、拘束する扉。


冷たいゴツゴツした地面。


ピチョンピチョンと何処からか水滴が垂れる音がする。
扉の向こうには届きそうで届かない位置に耳の垂れた犬が一匹、鍵を咥えて尻尾を振っていた。



「・・・・・・・」


立ち上がって呆然と鉄格子を握る。
見覚えがある訳ではないが、
身に覚えは確実にある場所。





パロマはまたしても牢屋に入れられてしまったのだった。






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bkm


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