15
マントを被って完全に姿が見えない筈なのに、城門を潜った段階で一人の兵士がパロマに気付いた。
そう、彼は気付いたのだ。
パロマのいる方角をしきりに注視する彼は、確実にパロマとの距離を詰めてきた。
行商の者に話しかけられても手でそれを制止し、視線は絶えずパロマの方角を見据えていた。
数歩歩くと、同じだけ数歩動く。
ちょっと速度を速めると、向こうも速めた。
確実に・・・・・彼にはパロマが見えていた。
彼は近くにいた彼の同僚らしき人物を捕まえて、視線は外さず何か口早で伝えていた。すると、彼の同僚も鋭い眼差しでパロマのいる方角を素早く見渡し、一点で視線を止めた。そう、パロマのいる位置で。
確実に・・・・確実に・・・バレていた。
もう四の五の構っていられない。
そこからはくるりと向きを変え、猛ダッシュをかました。靴音を響かせて城内に突入する。後ろの兵士は「あっ逃げた!!」と叫んだ。パロマの後ろからも激しい靴音が鳴り響く。見なくても分かった。絶対に追ってきていた。
右も左も分からないまま闇雲に走るパロマ。
・・・そして現在に至る。
迷路の様に入り組んだ城内は構造を全く知らないパロマには完璧に不利だ。帽子屋敷で同僚に追いかけ回されたのを思い出す。しかし以前の同僚のおふざけとは、今回は訳が違う。
捕まったら命の保証はない。
パロマは回廊から曲がったすぐの部屋に滑り込む。息を殺して佇んでいると、廊下ではガチャガチャと硬質の音と共に足音が近付きそして遠ざかっていった。足の速さだけではどうにもならない事もある。兵士達とパロマの距離はそれ程離れてはいなかった。
「はぁっ・・はぁっ・・とにかくっ、これを、隠さなきゃ・・・っ。」
パロマはスペアポケットを取り出した。中にはアリスの写真が入っている。彼女はそれをギュッと握りしめた。



―――きっと逃げきれない。





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bkm


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