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パロマは一旦森まで戻り、夜が明けるのを静かに待った。
時間帯が昼になったと同時に、気合いを入れて立ち上がる。
遠方には夜の時間帯とはまた違った趣のハートの城がそびえ立つ。
「やっと、ここまでたどり着いた。」
森の木々が小さく見える程、周囲を圧倒してそびえ立つ城塞は高い塀に囲まれ鉄壁の防御を誇っていた。
双方には真っ赤に彩られた柱がまるで扇の様に枝別れし、城下の街を威嚇している。
ハートのモチーフが全体的に施されているのも関わらず、人を近寄らせない威厳溢れる佇まいは、あたかも城主の性格を表しているかの様だった。
パロマはしり込みしてしまった自分を、頬を叩いて奮い立たせる。
(よし!ゴールは目前!頑張れ私!!まずは情報収集ねっ)
森の終わりにある高台から城全体を見渡していたパロマは、正面より横にそれた繁華街に目を付けて、そこに向かう事にした。




城の城下町はメイン通りから外れていても、行き交る人々でごった返していた。
大きく幅の取られた街道は、街の人よりも荷馬車を引いた行商姿の通行人が多く見受けられ、その大半は城へと続く道を我先にと進んでいる。
豪華な馬車がパロマの横を通り過ぎ、砂埃を上げた。
二頭の純白な馬に引かれたそれには、恐らく何処かの貴族の令嬢が乗っているのだろう。迷うことなく、優雅に城へと向かっている。
街の様子も何処かお祭り騒ぎだ。身分のある者が動くと、その配下の者達も大勢動く。宿屋だったり、食事処だったり、街ぐるみで『welcome』と書かれた旗が至る所で風に靡き、街道沿いの店は客取り合戦に色めき立っている。
「わぁ〜・・・・賑やかなのね〜。」
おのぼりさんであるパロマは、目まぐるしく動く街並みに目を丸くした。
この世界に迷い込んで初めて目にした街は、追手に追われながら垣間見ただけで終わってしまった。
その逃してしまったタイミングが今目の前にあり、色とりどりの異国情緒に視線が吸い寄せられそうになる。
時間があればゆっくり一軒一軒見て回りたい所だが、パロマはグッと我慢した。
「さってと情報収集っ情報収集!」
パロマは気も新たに、話を聞いてくれそうな人物を探す事にした。



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bkm


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