08
エースは真剣な表情で告げてくる。その言葉がパロマの胸を鋭く刺した。
彼は何も聞かないユリウスを心配して、行動を起こしているのだ。エースがパロマを不審に思いながらも、あの場で詰問しなかったのは、すべて彼の為だったのだろう。
事実を話せないという事がこんなにも人に迷惑をかけてしまうなんて、思いもしなかった。
何も聞かずに自分を匿ってくれたユリウス。伝えなかったのはすべて自分本位な思惑を優先したからだ。彼の気持ちなんて一度も考えた事が無かった。パロマは自分が取って来た態度を激しく後悔した。
「さて、そんな悲しそうな顔をしていると言う事は、やっと話してくれる気になった?俺も焚き木の始末をしないで――――――何だ?」
静まりかえっていた森が何だかざわめき出した。夜行性ではない鳥達が方々で飛び立つ。
すると、遠くの方から金属が触れ合う硬質な音が響き始めた。



「いました!エース様を発見しました!!」
「おーい!エース様確認―――!!!」



明らかに衛兵の出で立ちをした者達が、森の中から姿を現した。ガチャガチャと装具を鳴らしながらエースを取り囲む。
「エース様、こんなところにおいででしたか。至急城にお戻り下さい。女王陛下が首を切りながら待っておいでです。」
そこは長くする所ではないのか。パロマは気付かれぬ様少し離れて、予期せぬ出来事を傍観する。
「えぇ〜。俺はこれから帽子屋屋敷を冷やかしに行きたいんだけどぉ。」
「何を呑気な事を仰っているのですか!帽子屋屋敷はまるで逆方向です。また迷子になっていらっしゃったのですね。」
「舞踏会の開催が間近に迫っているのです。宰相閣下もエース様のご不在にお怒りになっていらっしゃいます。我儘を仰らずに、大人しく連行されて下さい。」
大の男に八方を塞がれたエースは、身柄を拘束され地に足も付けない。
「お前ら横暴だぞ〜!」「観念して下さい!私共の首がいくつあっても足りません!」等と言い合いつつ、その場から遠ざかる。
松明を持った彼らの姿が見えなくなると、また森は静けさを取り戻した。
「・・・エースさん、やっぱり迷子だったのね。」
1人呟いたパロマは、エースが連れて行かれた道を少し進んだ。


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