06
パロマは話の内容が分からなすぎてついていけない。
黙り込んだパロマに、彼はフッと笑って大げさに髪を手で払い話を続けた。
「そう恐れる事はない。幸いにも戻るのはとても簡単だ。君はガラスの小瓶を持っているだろう。―――そう、それだ。その小瓶を私に渡しなさい。・・・・何故・・中身がないのだ・・・?」


―――だってそれはさっき飲んだから・・・。


彼は目を見開きガクガクと動揺し始めた。先ほどの悠然とした態度とは雲泥の差だ。
「のっ飲んだ!?君には警戒心という一般常識はないのか!?少しは物事を疑ってかからないと、悪人に捕まって売り飛ばされるぞっ」
ナイトメアは小瓶の中身を飲んだと言うだけで、ひどい言い草だ。彼女にとってあの時は苦渋の決断だったのだ。
「―――とにかく、飲んでしまったのならしょうがない・・・。冷静になって考えよう・・・。いや、何も思い浮かばない・・・。もはやどうにもできない・・・。」
ナイトメアは、今度は頭を抱えて呻きだした。
(何て後ろ向きの考え方をする夢の中の住人だろう、夢でもこんなに絶望感に包まれて―――。)
「絶望感に包まれなければならないのは、むしろ君の方だと思うがな。そして私は夢の中の住人ではなく、夢・魔・だ。―――しかし、道を塞がなかった私にも責任は一理ある。何とか君が瓶の中身を満たせるまで、微量ではあるが、手助けをしようではないか。何か武器になるものを持たせ・・・君には到底扱えそうにないな。はぁ・・・。」
ナイトメアは白〜い目で彼女を見詰める。
パロマは何やら物騒な言葉が聞こえた気がするが、とにかく助けてくれるのならありがたいと心底思った。
でも、どうやって夢の中から実際の現状を助けてくれるのやら・・・
「はっ!君を起こしに役なし達がすぐそこまでやってきている!!それでは、何か生き残れるのに役立つ物を用意しよう。次に会う夢で渡すことにするから。・・・それまで、どうか死なないでいてくれ。」
鮮明に見えていた筈のナイトメアの輪郭が徐々にぼやけてきて、夢の中に溶けて行った。


(そう言えば私、喋っていない事まで会話になっていた・・・ような?)


不思議に思っていると、ひどく冷たい感覚がして夢の世界が遠ざかってゆく・・・。



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bkm


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