05
「・・・・何だ何だ!君は誰だ?!」


何もない空間で声が聞こえてきた。
パロマは驚いて周りをキョロキョロ見渡す。
すると1人の男性が何もなかった筈の場所に佇んでいた。サラサラの銀髪に、何やら珍しい眼帯をしている。
パロマは思わず上から下までジロジロと見つめてしまった。


―――だ・だれ?



「私はナイトメア、夢の番人だ。異物の君を見付けて飛んできてやったのだ。」
嬉しく思いたまえ、とナイトメアと名乗った彼は、エッヘンと胸を張る。
「・・・・え?ここ、どこ・・・?」
「君の意識がいる場所、それは身体を置いて飛ばされた精神の真髄、すなわち夢の中だ。」


(えっ、ゆ、夢の中、なの?)


パロマは自分がこうだと思っている『夢』との相違にオロオロと戸惑った。
いつも見る夢は、どこか舞台を傍観する観客にでもなったかの様に、勝手に流れてしまうのに対して、ここは自分で考える事もできるし、しかも動く身体を保っている。
パロマは自分の良く知る両手を、マジマジと見詰めた。
「おーい、現実に戻ってこぉい。―――な〜んて、夢の中で現実って言うのも可笑しな感じだがな。フッフッフ。・・・そうじゃない!君は何故ここにいるんだ!!」
「えっ私?私の夢なのに、私がいてはいけないの?!」
「い・いやっそうではない!そういう事ではなくてだなっ」
何故か慌てて言い返した姿がどこか気弱そうで、悪い人ではないとパロマは直感的に思った。
とにかく、今までで会った人達の中では一番話を聞いてくれそうだったので、彼女は今までの身の上を話してみる事にした。
「―――なるほど・・・。それじゃあ君は1人で穴に落ちたのだな。・・・道をふさぎ忘れたか・・・?あの時は何だかんだと忙しくて、思わず吐血して寝込んでしまったからな・・・。」
後半は独り言なのか、ボソボソ呟いていてパロマにはあまり聞き取れない。
「いやっ!君には全く関係のない事だ。気にするな。」
何だか異様に汗をかき、焦りながら喋っているように見えるが、彼女はとりあえず気にしない事にする。
「私、どうなっちゃったのでしょうか・・・」
「君は落ちなくて良い穴に落ちてしまったのだ。言いかえれば、求められてもいないのに、君は来てしまった。」
「・・・?」
「ここは望まれる者の望まれた場所。余所者はすべての者に好かれるが、望まれない者には1時間帯だとて辛い場所となるだろう。あるいはすぐに死が訪れる。君は直ちに元の世界へ戻った方がいい。」
「?!」



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bkm


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