02
「あれ??君は確かユリウスの所にいた子、だよね。街までお使い?」
「は、はぁ。貴方は無事に帽子屋屋敷に辿り着いたんですか?」
エースの問い掛けを軽くかわし逆に尋ねると、エースが突然何かに驚きパロマに指を指してきた。
「えぇ!君も帽子屋屋敷に向かっているの?奇遇だなぁ〜!!実は俺もまだ到達していないんだよ。良かったら一緒に行こう。」


(・・・・はい?)


「いやぁ旅は道連れ、世は情けてっね。そうと決まったら早く行こうぜ!」
話が180度ずれている。
了解した覚えもないし、帽子屋屋敷には向かっていないし、しかも道は真逆だし・・・そもそも何故まだ着いていないのか・・・・彼の言動には突っ込み所が満載だ。
パロマは大きく深呼吸してから、ゆっくりと話しかけた。
「私は帽子屋屋敷には向かってはいません。行くなら1人で行って下さい。今道順を調べますね。」
そう言うと、手に持った地図を広げた。
「おぉ!これはユリウスお手製の地図じゃないか!!・・・いいなぁ〜。」
エースは物欲しそうに地図を眺めている。パロマは地図とエースを見比べて、
「私はもう道筋は分かっていますので、この地図良かったらエースさんにあげますよ?」
笑顔で地図を差し出すと、ええ!いいの〜?と彼は喜んで両手を伸ばしてきた。
と、その時、二人の真横の茂みがガサガサと動き、にゅっと何かが顔を出した。驚いている二人の前で、目の前の地図にかぶり付きムシャムシャと咀嚼してしまった。
―――ヤ、ヤギ?!
めぇえええ、んめえぇええ、と山羊の大群が二人を飲み込む。
次々とやってくる山羊の群れに、ドンッガンッと固い体をぶつけられて、重心を失ったパロマの身体がグラグラとぐらつく。
エースが突如現れてから、予想外の展開続きでパロマは何が何だか分からなくなった。持った形で固まってしまった己の手を茫然と見詰める。そこにはお世話になった領主の真心が乗っていた筈なのに。
そんな重い空気と一緒にカチンと固まったままのパロマとは真逆に、エースはひっきりなしに頭を左右に振っていた。
「うおおおっ!これってオベルハスリヤギだろ?!すっげぇ〜、中々出会えない山ヤギだぜ!ねぇカメラ持ってない?カメラっ」
エースは少年の様に目をキラキラさせながら山羊を観察している。自分に向けられて忙しなく上下する片手に、パロマの視線が釘付けになった。



彼は本当に『軍事総括を任せられた騎士隊長』なのだろうか・・・。




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