01
ハートの城に続く一本道は森の中でも大きく舗装されていて、迷うことなく進む事ができた。しかし時間の流れが不安定なこの世界では、夜の時間帯がまたいつ何時訪れるか分からない。出来たらこの夕方の時間帯の内に何とか街まで辿り着きたいパロマだった。
(今回はこのユリウスさんの正確な地図もあるしね。)
大事な地図を胸に抱きしめる。
考えてみたらあんなに優しくしてくれたのは神父さんとアリス以来だ。帽子屋の面々はみんな悪魔だ。
(大事な人リストに彼も加えておこう。)
意気も新たに、パロマは森の中を進む。
暫くすると、パロマの向かう先の右側、雑草の茂みがガサガサと動き出した。
彼女の歩みがピタッと止まる。
動物がいるらしいが、それが草食なのか肉食なのか、それによってパロマの危険度もグッと違ってくる。
「やだっど、どうしよう。動かない方が良いのかな・・・っ」
できたら走って逃げてしまいたい所だったが、クマの前例から、走ると追ってくる生き物もいるのも学習した。・・・しかし、すでに自分が獲物として捉えられているのならば、後先考えずにここは逃げるべきか。
行ったり来たりの堂々巡りの思考のせいで、逃げる一歩を躊躇してしまい、結果すべてが出遅れた。パロマのすぐ傍の草むらがザッと左右に掻き分けられる。
そこの茂みから赤い腕がにょきっと伸びた。


「「あ!」」


出て来たのは人間だった。
「げっ・・・」
目線がバッチリ合ってしまい、パロマは一歩後ずさる。
(どどどどうして帽子屋屋敷に向かった彼が、しかも大分前に出て行った筈なのに、何故まだこんな所にいるの?!)
身体に付着した木の葉を払っているのは、今は最も出会いたくなかったハート城の騎士エースだった。
ここはまだ時計塔の目と鼻の先。パロマより数時間帯前に塔を出発している彼は、帽子屋屋敷の領土入りしていてもおかしくない。しかもハートの城へは真逆に向かう道なので、ひょっこり出会う可能性なんて想像すらしていなかった。急にパロマの心拍数が異様に上がる。


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bkm


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