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自分が使わせてもらっていた部屋の片付けがあらかた終えたパロマは、少し休憩をと塔の階段を登っていった。螺旋階段を一段一段踏みしめて上がると、塔の天辺まで登りつめることが出来る。最上は視界を遮る物が一切ない、360度のパロラマが広がる。
夕焼けで染まった世界は橙色から群青色に幻想的なグラデーションを作り上げ、オレンジに染められた雲が親子の様に寄り添って漂う。
雄大な景色気押されパロマは思わず息を飲んだ。高台特有の強く冷たい風が吹き荒れ、彼女のスカートをなびかせる。
すると途端に辺りが暗闇に包まれた。どうやらこの塔で迎える最後の夜の時間帯が訪れたようだ。
遠くの方ではユリウスが教えてくれた『ハートの城』の城塞が夜の訪れと共に一斉に灯りが灯され夢幻的な趣へと変化した。魔の王宮とは夢にも思えない程、煌びやかで華やかな一帯だった。
―――あそこに、アリスがいる・・・。


そしれ、パロマは躊躇いながらも、後ろを振り返る。


微かに見える、カラフルな光が散らばる宝石箱の様な街、その奥に佇む壮大な邸宅もキラキラと光り輝く。きっと同僚達が灯りをともしに部屋を回っている頃だろう、忘れもしない『帽子屋屋敷』だ。
(みんなどうしているんだろう・・・。)
同僚達はいつもと同じように働いているだろうか。
ボスは寡黙に、
エリオットは怒り気味で、
双子達は相変わらず遊び呆けているのだろうか。



(・・・それとも、私の事、まだ怒ってる?)



屋敷に住む住人達は皆、どこか何かが欠けていた。
ディーとダムは悪戯が大好きだが、やり過ぎても絶対に謝らない。
顔では心配そうに出来ても、口でそう伝える事は出来ないのだ。逆に言うと、どこまで許されるのか試していた所がある。


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bkm


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