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塔の正面階段を下りると雄大に広がった草原を二つに割る様に長い小道が森まで続いている。小さな白い花を咲かせたクローバー達が辺り一面を緑と白に染め上げ、とても穏やかな風景を醸し出している。森を前方に少し小高い丘に出た所でエースは二人に振り返った。
「ここまでで良いよ。それじゃお嬢さん、スコーンをありがとな。」
緩い風が三人の髪を揺らす。パロマは流れる髪を右手で抑えながら、さよなら〜と言って、左手を振った。
「ここからまっっすぐ行けば辿り着く筈だ。」
「大丈夫だって!小さなガキじゃあるまいし。」
「いや、お前は歩けない乳児以下だ。奴らの匍匐前進にだって負けるだろうよ。」
カラカラ笑っているエースにユリウスは投げやりに答える。
「全く、他人の領土に構っている程お前は暇ではない筈だろう。もうすぐ例の習わしの時期だ。」
「?」
パロマは何の事だか分からず、不思議そうにユリウスを見上げる。
「それまでには余裕で城まで戻ってくるよ〜!」
少し先に行ったエースが二人に手を大きく振った。それからそうだ!と手を叩いて
「おーい、ユリウスー!結婚したならウエディングドレスは着せてやらなきゃダメだぞー!!純白のドレスは女の子の一生の夢だからな〜!」
と大声で叫んだ。


「「・・・・・」」


彼はもう声が届かない位遠くまで颯爽と歩いていってしまった。







「結局、彼の中では私たち夫婦のままでしたね。」
「・・・そうだな。」
「まっすぐって言ったのに、道から逸れて左に曲がっていっていませんか?」
「・・・・・・そうだな。」
「ユリウスさん。」
「何だ?」


「・・・私、ここに来る前は帽子屋屋敷にいたんです。」


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bkm


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