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そう言って、彼は愉快気に笑った。ユリウスが少し興味をそそられたらしく、彼の話に耳を傾ける。
「近頃帽子屋屋敷の領土が嫌に騒がしい。きっと何かデカイ事件がこれから確実に起る。それを見に、ね。―――て、キミ、大丈夫?」
エースの話の途中でパロマは自分用のコーヒーを注いでいたカップを滑り落としてしまった。耳に響く砕破する音と共に、彼女の足元には無惨に砕け散ったカップの欠片が散乱する。
「だ、大丈夫です。ごめんなさい―――」
パロマは急いで屈んで欠片を拾い集める。しかし、震える指はその欠片をうまく掴めない。その姿をユリウスは無言で見つめた。


(―――ボスが・・・行動を起こしたのね・・・。)


ナイトメアに夢の中でもあんなに警戒されたのだ。
今まで平穏だったのがおかしい位だ。
この閉鎖された空間では、外界の噂等何一つ入ってこない。もしかしたらもっと前から挙に出ていて、自分の足取り位、ブラッドはもう掴んでいるのかもしれない。
「・・・帽子屋が、どうしたって?」
視線はパロマに向けたまま、ユリウスはもう一度詳細を問う。
「ん?あぁ、うちの潜伏している構成員の情報だと、武器と火薬を大量に仕入れているらしいぜ。何人も拷問部屋に連れて行かれては1人として生きて出てきていない、奴らは何を吐き出させていたのやらなぁ。街はいつもの小競り合いはなりを潜めて、恐ろしい位静寂に包まれているらしいぞ。」
パロマはしゃがんでガラスの破片を拾いつつ、意識はすべてエースの話に持っていかれたいた。額から嫌にゆっくりと汗が滴り落ちる。
「これは嵐の前の静けさだって。俺の予想だと、奴等は確実に何かを企てているね。」
じゃ、そう言う訳だから〜、と怖い話の後で爽やかに剣を装着して、二人に手を振る。
「これは持って行け。森の手前まで送ろう。」
ユリウスはパロマの作ったスコーンを簡素に包んでそれをエースに渡し、椅子から立ち上がる。
パロマは少し青ざめていたが、急いで二人の後を追って部屋を出た。



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