6(終)

グロ表現、死ネタ、登場人物が精神を病む描写が含まれます。









以前入った部屋とは思えないほど荒れた部屋。
壁紙は引きちぎられ、床にはあらゆるものが散乱し、その中には粉々に割れた、元は食器であったであろうもの。不自然に割れた窓。
そして、血。

血の色の表現として赤黒い、といった表現をよく耳にするが、乾いてしまい、赤黒いを通り越して黒くなった血。血。血。
指どころか手の形までくっきりとわかるほどの跡がそこかしこについている。
一目見れば異常とわかる部屋。
ふわりと生臭い香りが漂う。


「うっ……」
転入生は吐き気を催したらしく、口元を抑えて青白い顔をしている。
部屋はそれを誰も責められないような、ひどい惨状だった。


そして、隅にうずくまる「王子様」。
あの美しい見た目からは想像もできない有様だった。
ぐしゃぐしゃになった髪、もう既に乾ききった血の
ついた服、焦点の合わない瞳。
彼は美しい、などといった言葉とは対極に位置するであろう姿で震えていた。
絶えず何かを呟き、涙を流し、そして傷口を掻き毟る。
はっきり言って異常だった。


もはやショックを受ける、といったレベルを超えている。
一周回って笑いすら出てきた。
あぁ、俺の好きだった人はいなくなってしまったんだ、と他人事のように、ぼんやりと思った。

なにが正気を取り戻した、だ。
さらに酷くなってんじゃねぇか。



ぐる、と「王子様」は突然振り返る。
それは非常に気持ちの悪い動きで、思わず目をそらしてしまった。

どこも見ていない、虚ろな目で「王子様」は笑い出す。
「あは、あはは、みんながきちゃった。むかえにきちゃった。みつかっちゃった。」
その語りはとてもじゃないが、正気とは思えない、妙に明るい響きを伴った語りだった。



「いかなきゃ。」



そうとだけ呟いて、「王子様」は割れた窓に近付き、そして、そのまま。









落ちた。


















叫んだ。
悲鳴とも怒号とも区別のつかない、叫び。
転入生は悲鳴を上げた後、そのまま崩れ落ちた。

少しの間のあと、重たい音。
「王子様」が落ちた音。死んだ音。


あぁ、この学園は。
どうなってしまうのだろう。

俺は、そして彼は。
どうなってしまうのだろう。





予想ができなかった。考えたくなかった。
「王子様」の最後の笑い声が耳にこびりついている。
その笑い声は、止みそうになかった。








(終)


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