王子様の崩御 1

短編、転入生パニック!!の続編です。そちらを先に読まれてからの閲覧をおすすめします。



この物語は、少年達の物語だ。
昔に流行った、少女漫画のような。
外界と隔絶された箱庭での少年達の物語。


それらの登場人物のような、愛に飢えた少年と、そんな彼を救おうとした少年だとか。人を愛せなくなった少年に、自らの命を投げ打ってまで愛を伝えようとした少年だとか。そんな少年達は登場しないけれど。

それらの物語と同じように、僕らは恋をする。誰かに憧れる。時に怒り、そして悲しむ。
あたりまえのことだけれど。

この物語における、そのあたりまえの結末は、ろくでもない。
当然のように、恋は成就しないし、憧れの人には幻滅するし、怒りは的外れな八つ当たりだし、悲しみは独りよがりだ。

そしてこの物語は人が死ぬ話だ。
他でもない、この僕が死に至る。
だからといって、殺人事件が起こるわけでも、大事故が起きるわけでも、持病で死ぬわけでも、自殺するわけでもない。
ただ、僕という一個人の気が狂い、そして死に至る。
それだけの話だ。




王子様の崩御




僕は、普通の家庭の長男だった。
おとうさんと、おかあさんと、おねえちゃんの四人家族。

だけど、僕以外の3人は、海難事故で死んでしまった。
僕だけが生き残ってしまった。

それから僕は、同い年のいとこがいる、おばさんの家に引き取られた。
おばさんに迷惑をかけないように、と勉強も運動も、今まで以上に頑張った。

いとこは純粋で、素直で、騙されやすくて。
とても可愛かった。
弟のように思っていた。
昔から気弱な彼を、僕が守っていたから。

だけど、いとこは僕の知らない間に成長していた。
強くなっていた。
理不尽に立ち向かう術を手に入れていた。

あぁ、もう今まで通りにはいられないんだな、と悟った時、僕は彼と離れることを決意した。


それで、全寮制の学校に進学することを決めたのだった。

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