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顔に似合わないほどふてぶてしく歩んでいく「王子様」に付き添い、共に中心へと歩んでいくと、転入生とそれに詰め寄る少年の姿があった。



「おはよう、日向くん。」
優しく微笑みながら転入生に声を掛ける「王子様」。彼に絡んでいた少年が怯えたように振り返った。
「あんまり人を困らせちゃ駄目だよ。」とだけ優しい声音で言うと、少年の肩を叩いた。
元気のない友人を励ますような動作であったが、少年はそのまま崩れ落ちる。
それを気にもとめず、「王子様」は転入生の手をとる。



「さ、行こうか日向くん。」
悔しいことに、我らが「王子様」も転入生…縹 日向(はなだ ひなた)に好意的であるのが事実だ。彼をよく思わない生徒からは取り巻きの一人、とも揶揄されている。
「王子様」は彼に対して恋愛感情を持っているのだろうか。

このままでは隊全体の士気が下がる。そうならそうで明言して欲しい。
明日、親衛隊員と「王子様」との間での交流会がある。その場で彼について言及されるのだろうか。
なんとも言えない気持ちで「王子様」を教室へと送り届けた。

「王子様」との会話の中で、親しげに「王子様」の名前を呼ぶ転入生を少し妬ましく思ってしまう自分が情けなかった。
親衛隊に入った時点で、たとえ親しくしてもらえても、恋人はおろか、友人にさえなれないことはもはや確定している。そんなことは、わかっていたのに。
「王子様」に好意を向けられる人に嫉妬してしまう。
もしも俺が親衛隊員じゃなくて一介の生徒だったなら。
そんなことを考えてしまう。


この薄暗い気持ちに呑まれてしまう前に、と今日の放課後のことを夢想した。
「王子様」の部屋へのお呼ばれ。
クジで選ばれた人にのみ与えられる、毎日入れ替わりの「王子様」の世話係。
世話係、と言っても放っておくと、一食も食事をとらずに完徹する(しかもそれが3日続いたりもする。危なっかしい。)「王子様」のお目付役というか、見張り役なのだが、「王子様」の側にいることのできる数少ないチャンス。

前回の交流会の時に勝ち取ったこの一日。
良い思い出で終わらせたい。

しょうがないのだ。
「王子様」は「お姫様」に恋するのが当然なのだから。





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