転入生パニック!!

転入生が来た。
そいつは金髪碧眼の美少年。
見た目だけなら、うちの学校なら親衛隊ができてもおかしくないような、お綺麗な顔。

しかし、その顔に反して本人の性格は大人しいだなんて言葉と対極にある。
悪いやつではないのだが、思ったことを率直に言いすぎる。純粋というか、なんというか。空気が読めないんだよなぁ。

そんな奴は、校内でも人気のある奴ら…主に生徒会の面々を次々と落としていき、校内を混乱の渦に陥れた張本人だ。
そんな転入生に対し、校内で制裁と称した嫌がらせが頻発。
それを抑えるために、俺達は大忙しだ。
転入生自体は悪い奴じゃないんだけども。俺は転入生を好きになれない。俺達の仕事を増やしやがって。
そういった目で見てしまうのは仕方が無いだろう。




…申し遅れた。俺は由比ヶ浜駆。
この学園で生徒会に負けず劣らずの人気度を誇る"一般生徒"であり、知らぬものはいないと言われるほどの有名人、「王子様」の親衛隊員だ。風紀委員ではない。

俺が守る対象である彼は「王子様」と呼ばれてはいるが、その外見は「王子様」といった呼び名からイメージするものとは異なる。

超のつく美人であることには代わりがないのだが、その外見を称するならまさに「お姫様」という言葉が出てくるような、可愛らしい見た目。
少女のように可憐で儚い、それでいて凛と張り詰めた空気を纏った、そんな人。

そんな彼が「王子様」と称される理由はその行動にある。
紳士的で穏やかな性格に、公平な態度。
誰もが理想とするような、素晴らしい人格の持ち主だ。さらにテストはいつも満点、運動もできるという完璧超人っぷり。
彼の人柄に魅せられて親衛隊入りしたものは数しれず。

しかし彼は、何の委員会にも属さない"一般生徒"であり、高等部受験で入学した"編入生"だ。
生徒会役員にも勝ると言われている規模の親衛隊がつくのは異例と言える。

そんな「王子様」に叶わぬ恋をし、親衛隊に属しているのが俺。

親衛隊自体も相当に変わっていて、「王子様」の願いを聞くために存在する。

「王子様」からのお願いは大きくわけてみっつ。

・親衛隊入隊の際の試験のようなものがあるのなら、僕にも参加させて欲しい。
・困っている人がいたら助けてあげて欲しい。また、人を困らせることをしてはいけない。(つまりは制裁行為の禁止とその仲介をして欲しい、といった頼みだ。)
・親衛隊のみんなとの交流の場を設けて欲しい。

「王子様」はそれ以外のわがままは言わず、それどころか俺達に対して非常に好意的だ。
さらに彼は、親衛隊に所属するもの全員の名前を覚えている。
この間、「王子様」に名前を呼ばれて挨拶された時は嬉しすぎてその日の授業はずっと上の空だった。
俺、この人を好きになってよかった、と心から思う。他の親衛隊ではありえない高待遇。
そんな彼の態度に惚れる人もまた多数。

……いけないいけない、どうしても「王子様」の話題になると長くなる。
「王子様」のことはまたおいおい説明するとして、本題に戻ろう。


俺達は転入生が来たことによる学園内の大混乱の打撃を風紀委員とともにモロに受けている。
だが、他でもない「王子様」の頼みだ。
困っている人がいたら助けないとな。





今日は俺が「王子様」の護衛役だ。
久々の生の「王子様」、とわくわくしつつ、部屋まで迎えに行くと「王子様」はタイミングよく部屋から顔を出した。
「あれ、おはよう駆くん。今日は駆くんが当番?」
にこりと笑う「王子様」。めっちゃきゅんきゅんした。

「王子様」と共に教室に向かう途中。
廊下がやけに騒がしい。生徒会でもいるのか?と思ったがどうやら違うようだ。
見知った顔に声を掛けると、どうやら親衛隊絡みの騒ぎらしい。
そして人ごみの中心に、転入生の顔がいた。


…この野郎、朝の幸せなひとときを壊しやがって。

「王子様」が「困ったねぇ。朝からこの喧騒はよくないよ。」と人ごみへ足を踏み入れる。
俺はそれに付き添い、共に中心へと向かった。



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