ガラクタだらけのこの世界に、僕もガラクタとなるべくして産み落とされた。
毎日毎日預言預言。……気が狂いそう。
愚かで馬鹿なガラクタたち。ミサでは礼拝堂に収まりきらないほど溢れかえって、口々に浅ましくほざいて、耳障りに縋るんだ。――僕に。
導師。始祖ユリア。教団。預言信仰。なんて馬鹿らしい。
導師なんて、預言に記された人物を、本人の意思は蔑ろに『預言』だからと勝手に連れてきて、縛り付ける枷じゃないか。
痛いよ、……この枷は。
言うなれば、羽をもがれ翼を折られた鳥。言うなれば、四肢を切り落とされ血の涙を流す人間。そして結局ガラクタになる。美しい音を奏でられなくなった、修復不能の壊れた楽器。
全てはクダラナイものだらけなんだ。預言も世界もニンゲンも何もかも。
僕も遠くない未来、縛られたまま、ガラクタという変わり果てた姿になってしまうのか。……変わり果てた? あぁ、最初からガラクタだったっけ。
どうすれば壊せるんだろう。ガラクタばかり生み出してしまう世界を。
どうすれば消せるんだろう。預言と言う見えないくせに縛り付ける枷と鎖を。
どうすれば止めれるんだろう。この止まらない耳障りで目障りな連鎖を。
それなら。僕は、呪詛を遺す。ガラクタだらけの乱れた世界に。
道順の示された面白みに欠ける迷路なんて、あるだけ邪魔だろう? どうせ死んだあとは無縁の世界だけれども、特別に贈り物をしてあげる。
「ねぇ、ヴァン。成功したレプリカの例って、実物みることできないの?」
「可能ですが、不安定なため導師に危害を加える恐れが」
「構わない。見せてよ」
「……御意」
僕はただでガラクタに成り下がる気なんて微塵も無い。だから世界にオクリモノをする。
……なら、目の前のこいつはなんだろう?
こいつが預言を滅ぼそうとする理由なら知っている。恐ろしく非人道的な思考の持ち主であることも。
彼もガラクタだろうか。何か違う。けどそれが何であるかさえも知れない。
もうどうでもいいんだ。僕は復讐できればいい。そう、復讐劇の幕開けは、僕が飾って見せよう。
絶対的預言に綻びを。
それは、導師が世界へ遺す最後の預言。
さぁ。僕の代わりにガラクタになる、そいつらはどんなモノ?
死後の世界なんてものはない。僕は世界の全てを知っている。だからこそ、何かを忘れたなんてことにはきっと気づかないのだろう。
'090511 加筆修正・再掲載
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