ND2013・Shylph Redecan・Luna・18の日
今日でこの日記も最後のページ。確かイオンが、一年日記って言ってたな。
この赤い表紙を見てるだけで、イオンを思い出す。……二年も一緒にいたのに、ぼんやりで申し訳ないんだけど……。
イオンがおれ達のとこに来なくなって、もう一週間になった。アリエッタが一人で訪れたこともあったけど、三日ほどでそれもぱったり途絶えてしまったし。
アッシュはおれに何度も理由を訊いてきたけれど、答えることができなかった。
……あれっきり、なんだ。おれ達が行動できる範囲内を歩き回ってみても会わない。
……そういえば、前にあそこで隠れん坊してたっけ。結局アッシュが拗ねたりぐすったりしてたから、おれは比較的わかりやすいとこに隠れて見つかって、一緒にイオン達探したりして。アリエッタは隠れん坊の達人だったなぁ。――話がそれたけど、楽しい思い出だから消さないでおく。
博士にそれとなく訊いても、やっぱり「知らない」の一点張り。
……イオン、どうしたんだろう。
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ND2013・Lorelei Decan・Gnome・47の日
二冊目に入って二ヶ月と少し。
彼専用の研究室を訪れると、ディストが真剣な眼差しでモニターを食い入るように見つめていた。
……「フォミクリー」や「同位体」がどうとかって、呟いていた気がする。
また、レプリカ、作るのかな。また、おれ達みたいに外から隔離するのかな。
被験者は誰だろう。何のために作るのかな。
……おれ達は、どうなるんだろう。
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ND2014・Rem Decan・Shylph・34の日
年を越えた。時間が経つのは早い。
おれさ、誕生日忘れちゃったんだ、イオン。
でもね、イオン。……おれ、知ってるよ。おれ達の本当の誕生日……作られた日なんて、イオンは知らなかったんだよね。
それでも、誕生日ってものがあるんだって教えてくれた。アリエッタと一緒にお祝いしてくれた。
ありがとう。……すごく、嬉しかったと思うんだ。
……ごめん。本当は、よくわからない。
なんでだろう……なんだろう。いろんな感情がごちゃ混ぜになるんだ。すごく矛盾してる。
でもアッシュはすごく喜んでて、きっと俺もそうだったと思うから。
ありがとう。
……ごめんなさい。
……日記にならなかったなぁ。
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ND2014・Undine Decan・Ifrit・7の日
最近体調を崩しやすくなった気がする。風邪みたいな症状が癒えない。今日は前進の関節が痛んだ。
なんとか隠してたつもりだったんだけど……とうとうアッシュにも気付かれちゃったし。
あぁ、あの剣幕はすごかったなぁ。
心配させて、ごめん。ありがとう。
アッシュが睨んでるし、腕も痛いから、今日はここまでにしておく。
やっぱり文章、まとまってなかったな。
「……じゃあ何だよ。体調悪かったの、ずっと隠してたのか? ……おれに」
「ごめん」
時計を見れば、そろそろ正午を過ぎる頃。無理やり寝台に寝かされたおれを、そこに腰掛けたアッシュが不機嫌に見下ろしている。
どんな叱責が飛んでくるかと視線を泳がせていたが、静寂を破ったため息に、思わず瞬く。
「……怒らないのか?」
「怒ってるに決まってんだろ」
じろり。鋭い目に、反射的に謝った。
彼は小さな舌打ちとともに荒く前髪をかきあげて、まぁなんだ、と顔を背ける。きれいな朱金が揺れた。
「……お前のことだし、俺に心配させたくなかった、とか言うんだろ。……どうせ」
それが気にくわないけどな!
自分の発言にうっすらと頬を赤らめ、慌ててアッシュはそう吐き捨てた。
おれはというと相変わらず瞬きを繰り返していて、アッシュはもう一度舌打ちすると、早く寝ろ、と手で両目を覆われる。視界が一瞬で真っ暗に染まり。
……まだ、昼過ぎなんだけどな。
まぁいいか、と全身から力を抜いて、その後は心地よく睡魔に導かれるまま。
――ND2014。
おれ達が生まれて、もう三年と四カ月。
(おれ、消えるのかな)
H21.5.11 加筆修正・再掲載
二人が作られたのはND2010・Lorelei Decan(13月)の後半としています。
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