星の透き通る夜

「よぉ、マルコ。お疲れさん」
「サッチ」
見張り台に立つマルコのもとにひょっこり現れたのはサッチ。
手には温かいココアが握られている。
「差し入れ」
「ありがとうよい」
マルコは座ってココアに口をつける。
サッチもその隣に腰掛けて二人で談笑する。
カップから上がる湯気と口から吐かれる白い息。
「寒いな」
飲み終えたカップを端に寄せ、サッチがマルコを抱く。
「温かいだろ?」
「別に平気だよい」
「そうか」
その割には体が冷たい。
膝の上に座らせ抱え込むようにして抱くと恥ずかしいのか体がもぞもぞと動く。
可愛いなぁ。
サッチがからかい半分に首元を指でなぞると面白いくらいに体が跳ねた。
「おっ、ここ弱いのか。いいとこ発見したな」
「触んなよい!」
「怒るなって」
さらにぎゅっと抱きしめると黙った。
背に吹き込む風は冷たいけれど互いに触れる体の部位や心は温かい。
サッチはそのまま抱きしめ続けマルコもそれに身を任せた。

やっぱり寒いな。
温かいとは言ったものの風が吹き込むため寒くてしょうがない。
顔や首元、サッチのマルコを抱きしめる手の甲が冷えてくる。
その冷えた甲がふいに温かくなった。
冷たい空気に晒されていた手を覆ったのはマルコの手。
指同士の隙間に新たなマルコの指が滑り込んでくる。
絡んだ手がきゅっと握られる。

キスしてやろうか。

そんな思いがサッチの頭を掠める。
もしここでキスしたら照れて真っ赤になるだろうか?
もしくは怒鳴られる?
いや、両方か?

未だに親友から恋人という変化に慣れないマルコにサッチは昼間殴られたばかり。
服の下にはばっちり痕が残っている。

人前でちょっと抱きついただけなのにあれは痛かったな。
それでも絡められた指がもどかしい。
自分から触れたとはいえ、マルコからの行為。
これはいいってことだよな?

絡められた手はそのままにサッチのもう片方の手がそっと外れマルコの顎に触れる。
マルコの肩がぴくりと動いた。
「マルコ……」
寒さで少しかさついた唇が重なる。
ほんの数秒触れるとそれはそっと離れた。
状況を飲み込んだ頬が赤みを増していく。
ただし赤くなったのはマルコじゃなくて……。
「サッチ、顔が真っ赤だよい」
楽しげに笑うマルコの顔。
その顔と言葉にさらに顔が熱を帯びていくのをサッチは感じた。
「お前が考えることなんてわかるんだよい」
真っ赤な舌が白い歯の隙間から覗く。
悪戯に満ちた瞳に不覚にもぞくりとした。
これが昼間と同一人物か。

「あーやられた」
負けたとばかりに突っ伏す。
ちらりと見えたマルコの勝ち誇った顔。
ちょっとむかつくよなぁ。
「おい、サッチ!」
マルコの大声が響く。
それも当然。
突っ伏したサッチの頭はマルコの肩にあり、そこから首に舌を這わせているのだから。
絡め合っていた手も外し、着込まれた服越しにその体を探る。
俺があれで終わると思ったら大間違いだ。
むしろ興奮したし。
サッチの行為はエスカレートしていく。
「なっ、それ以上は止めろい!ふぁッ」
「止まらねぇよ」
「じゃ、じゃあせめて部屋に……」
「りょーかい。部屋ならいいんだな?」
「う……」
「あ、でも見張り中だな。仕方ねぇ、見張り交代まで待っててやるよ」
そう言って放置されていたカップを手に取る。
「どこ行くんだよい」
「これ片付けてついでに毛布持ってきてやるよ」
笑ってサッチは立ち上がったがマルコによって下に引き戻された。
「マルコ?」
「いらねぇよい」
「は?」
「毛布。どうせ後数時間だい」
「数時間でも寒いだろ。ほら顔も冷たい」
サッチが触れるとその頬は驚くほど冷たい。
するとその手をマルコがぎゅっと握った。
「だから取りに行く間が寒いだろい」
拗ねたような目がサッチを見る。

ああ、そうか。
そういうことか。

不器用な言葉にサッチは笑む。
「……何にやにやしてんだよい」
「さぁ、なんでだろうな?」
「んッ」
わざととぼけた振りをして再びその体を抱き込む。
「後でもっと温かくしてやるから今はこれで我慢な?」
色を含んだ囁きと触れた唇に冷たい頬が熱を発した。


(寒くて温かい夜のこと)



椎名さんに捧げます!

遅れましたが誕生日プレゼントとして捧げます♪
41でおまかせということでこんな形になりました。
書き直し等も受け付けますので遠慮なく。
どうぞこれからも仲良くしてください。
大好きです(*^^*)


[ 9/12 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -