愛のカタチ

「愛してるよい」

毎日のように囁かれる言葉。
贈られるキス。
そして行為。

骨の髄まで愛するかのごとくマルコはサッチに接する。
サッチもそんなマルコの愛を一心に受け止めていた。



ある日サッチが倒れた。
島特有の感染症であり、他の船員も感染した。
数日の隔離。
その後は安全が認められ解放された。
たった数日のこと。
それでも飢えた心は相手を求めていた。

早く会いたい。
早く触れたい。
早く感じたい。

早く、早く、早く……



扉を開けると暗い室内が背中にある月で照らし出される。
青白い光が見せる愛しい姿。
ゆっくり近づいていけば身を起こしてランプに手をかける。
青からオレンジ色に変わる姿。
くずれた髪と服がその姿をやつれて見せる。
頬をそっと指でなぞった。
「大丈夫なのかよい」
「ああ大丈夫だぜ」
「本当かい?」
言われてもすぐには信じられない。
なにせ数日も離されていたのだから。
「なら確かめてみろよ」
サッチの言葉にマルコは傍にあったナイフを取る。
「生きてるねい」
「だろう?」
「よかったよい」

生物の根幹。
心臓が動き、血を送るということ。

とめどなく溢れ来る血液。
それは生の証。

「安心したよい」
自ら切り付け流れ出た恋人の血をべろりと舐め取る。
生温かい鉄の味がマルコの心を落ち着かせる。
舌から喉を伝う感触に心が喜びに震える。

血は生き物には必要不可欠なもの。
その者の中心から流れ全身を支配する。
すなわちそれを取り込むということはその者を取り込むことと同義。

傷口から血を吸い取るように口付け鬱血を残す。
さらに滲んだ血を一舐めすると白い布でマルコは静かにそれを覆った。
蒼い目が翠の目を見つめる。
その色をまるで己のものにするかのごとく。



サッチの喉が口の中に生じた唾液を飲み込む。
微かに喉が鳴き、日に焼けた骨ばった手がその喉を捕らえた。
堅いベッドへ押し付けながらその首を絞めていく。
苦痛に顔を歪ませながらもサッチは抵抗しない。
赤くなる顔に自然と滲む涙。
やがて喉は解放され浮かんだ赤色は消え去る。
けれど滲んだ水の粒が行為の跡を残す。

血が体の真髄ならば、涙は心の真髄だろう。
ヒトの哀しみと喜びを具現化した雨粒。
生理的にも流されるそれが塩辛いのは母なる海の名残か。

今流れている涙は感情によるものか、それとも生理的によるものか。
感情によるものならば哀しみか、喜びか。
前者であってはならない。
それは自分を否定するから。

「どうした?」
口を開く顔の目端から零れ落ちる涙。
シーツを丸く染める。
涙を零した瞳が笑った。
柔らかな美しい笑み。

傷つけようとも抵抗しない。
殺されようとしても抗わない。
何もかもを受け入れる。
己を否定しない。

「愛されてるよい」
この男は自分を拒絶しない。
この手が相手に何をしようが、自身に何が起ころうが。
何をしても許されるのだ。
例え自分が何者であろうとも。

受け入れてもらえるという自信。
愛されているという事実。

マルコの唇が緩やかに歪む。
「俺が?」
合わせるかのごとくサッチの唇も弧を描いた。
この男は自分を求める。
この手が相手を掴み損ねても、自身に何が降りかかろうとも。
何時も追いかけられる。
例え自分が穢れていたとしても。

望まれているという自信。
愛されているという事実。

サッチの言葉にマルコは再び笑う。
「違うよい。いや、違わないねい」

“俺も愛しているから”

音にならなかった言葉をサッチは眼差しで理解する。
自分はこの男を愛していて、この男も自分を愛している。
絡む視線は常に互いを求む。
マルコの体がベッドへ乗り上げ目の前の体を押し倒す。
満足そうに笑い合う唇が合わさり、相手を喰らう。
血を巡らせる心臓が高鳴り、涙を生む目が閉じられる。
抱き合う体は熱を伝え、心と共に互いを貪った。


(全てが僕のモノ(全てが君のモノ))
(アンバランス同士のバランス)



羽衣さんに捧げます!

相手を侵食したいほどに愛するマルコと狂うような愛され方に至福を覚えるサッチ。
「ラブラブなんだけど愛情が極限までひん曲がった一番隊隊長な14」ということでしたがなんだか物足りなくてスミマセン。
しかもマルコどころかサッチも歪んでしまいました。
小さいころ能力のせいで化け物と呼ばれ続けたマルコと海賊になる前に理不尽に人を殺してしまったサッチという裏設定があったりします。

書き直し&返品は受け付けます!
相互ありがとうございました(^^)


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