赤に揺らぐ

「よう。何を作ってるんだ?」

「……何であんたがここにいるんだよ」
窓越しに微笑む赤髪を見て唖然とした。
「俺が質問してるんだが」
「見ればわかるだろう?」
「ケーキ作ってんのか」
「はずれ、マフィンだ」
「マルコにか」
「いや、隊員たちに配るんだよ」
「ふぅん?仮にも隊長なのにか。まめなんだな」
「……マルコなら情報収集に出かけてるぜ。ついでに言うとエースもいねぇからな、遠征中だ。残念だったな」
「そうか」
「……帰らねぇのかよ」
二人はいないというのに、ニコニコ笑いながら微動だにしない。
用が無いならばさっさと帰ればいいものを。
「なんで?」
「なんでって、マルコとエースはいないって言ってんだろ」
「あいつらに用があるって言ったか?」
「それ以外に何があるんだよ」
全く白々しい。
あんたがあの二人をしつこく勧誘しているのはこの船の誰もが知っているんだぞ。
「当ててくれよ」
そう言って、何かを含んだような笑みを見せる。
「しらねぇよ。そんなもん」
素っ気無く言い返す。
まともに取り合ってたらきりがねぇ。
「つれねぇな。お前に会いに来たってのに」
「あ?」
思わず手が止まった。
今、何て言った?
「お前は俺のものになる気はないのか?」
「はっ、何言って……」
ぞくりとした。
普段のへらへらした奴とは思えない口調だった。
「落ちたぞ」
その言葉にはっとして見れば、手にしていたはずの泡立て器が床に落ちていた。
まさか動揺しているのか?
「冗談はよせよ、お前はマルコとエースを……」
「そうだな。あいつらも欲しい」
面白そうに答える。
「マルコの能力は魅力的だ。しかもそれを除いても頭脳に戦闘能力も随一。流石1番隊隊長を張るだけのことはある。エースはルフィの兄貴だし、あの若さ溢れる力強さがいいよな」
勝手に一人でうんうん頷いている。
「でもお前は違うな」
赤髪の言葉が響く。
「そうだろうよ」
マルコの能力の高さは俺だってわかっているし、エースも乗船してすぐに隊長になった。
同じ隊長でもあいつらに比べると俺は劣る。
言われなくてもわかってることだ。
「なんだか守ってやりたくなる」
「は?」
予想外の言葉に眉をひそめた。
顔を上げれば、いつの間にか窓越しにいた赤髪が目の前に来ていた。
そして次の瞬間、唇が触れた。
「ほらな。隙が多い」
音も無く唇が離れ、何事もなかったのように言葉が告げられる。
「なっ、なっ……」
あまりの出来事に声が震える。
「俺のものになれよ、サッチ」
またも真剣な声が俺に迫り、どくりと心臓が動いた。
視界が赤で埋め尽くされる。
思わず目を閉じた。

「離れろい」
静かな、それでいて怒気を含んだ声が響いた。
「マルコか」
赤髪の声とよく知った覇気の感覚に目を開けるとドアのところにマルコが立っていた。
「マルコ、もう戻って……」
「そいつから離れろよい」
鋭い目が赤髪を貫く。
「わかったよ。だからそう睨むな」
お手上げだというように両手をあげながら俺から離れる。
そしてそのまま侵入した窓からひらりと身を躍らせ、赤髪はあっという間にその姿を消してしまった。

「なにしてんだよい」
「悪い……」
マルコの咎めるような声に謝罪を口にする。
「まさか行く気だったのかよい?」
「そんなわけねぇだろ!」
力強く言い返す。
そんなことは有り得ない。
「試しに聞いてみただけだよい。サッチ、お前はうちの4番隊隊長で俺たちの大切な家族だよい」
「ああ」
どうやら俺はおかしいのかもしれない。
マルコの自分の存在を示してくれる言葉よりも赤髪の去り際の言葉、

“またな、サッチ”

あの言葉が頭に残って、こんなにも胸が揺らぐなんて。


(心震わす言の葉)



前から書きたいといってた赤4。
とりあえず消化。
赤→4←1だったらちょっと萌える。

シャンクスは普通にしてればかっこいいはずなんだよね。
赤→1のときは超変態化するけれども・・・!
変態バージョンもいつか書いてみたいです。


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