おやつタイム

「ケェキ、ケーキ〜」
「今日は何味だろうねい」
ニコニコと笑みを浮かべながら、いそいそと食堂に向かうはエースとマルコ。
これから楽しいおやつタイムだ。
「やっぱチョコじゃねぇ?昨日がショートケーキだったし」
「馬鹿だねい。あのサッチがそんな単純な発想すると思うかい?」
「単純で悪かったな!」
「何にしても楽しみだよい」
期待に胸を膨らませ、扉を開ける。
「おい、サッチ、来たよい」
「ケ〜キ〜!!」
「はいはい、わかってるよ」
奥からひょっこりとサッチが顔を出す。
その手にはしっかりとお目当てのものが乗せられている。
「うわっ!美味そ〜!」
「へぇ、ティラミスかい。いいねい」
目を輝かせるエースと舌なめずりするマルコ。
それでも早く食べたいという気持ちを抑えつけ、それが差し出されるまでおとなしく待つ。
「すぐ切り分けるからな。……イタッ!」
サッチが声を上げる。
「どうしたんだ、サッチ?」
「いや、うっかりして、ちょっと切っちまっただけだ」
心配そうに尋ねるエースにサッチが答える。
見れば指先に血が滲んでいる。
どうやらケーキを切り分ける瞬間、自分の指も誤って切ってしまったらしい。
「ケーキは無事だろうねい」
すかさずマルコが言う。
「俺の心配は?」
「んなもん無いよい。お前の不注意だろい。自業自得だよい。ちゃんと気をつけろい」
元はと言えば、お前等のケーキを切ろうとして出来た傷なんですけど!
マルコの言葉にサッチがすぐさま言い返そうとするが、
「全くその通りだな」
その瞬間、背後から聞きなれた声がサッチの耳に届いた。
「ビスタ!」
いつの間にか現れた恋人の姿に驚くサッチ。
「確かに気を付けてもらわなくては困るな。大事な体なんだから。だが、マルコ、あまりこいつを苛めないでやってくれよ」
やんわりとマルコを注意するビスタ。
「そんなつもりはねぇよい」
もぐもぐと口を動かしながら、マルコが答える。
いつの間にか勝手に自分でケーキを切り分けている。
「大丈夫か?サッチ」
「ああ、たいしたことねぇよ。こんなの舐めてたら治るって」
心配するビスタに笑ってみせるサッチ。
「そうか。では……」
そう言うと、ビスタはサッチの傷ついた指を己の口に含んだ。
くすぐったい感触が指先を襲う。
「なッ、やめろよ!」
顔を赤らめるサッチ。
「……ふむ。止まらないな」
「いきなり何すんだよ!」
「お前が舐めたら治ると言ったんだろう?」
「ッ!」
「仕方ない、今度は止まるまでやってみるかな」
そう言いながら、再び指をくわえようとする。
「止めろよ……!」
顔を赤くしたまま、必死でその動きを遮るサッチ。
「ハハ、冗談だ。こうすればいいだろう……」
そんなサッチを見て、ビスタは笑いながらハンカチを取り出すと、それをキュッとサッチの指に巻きつけた。
「……」
「痛くはないか」
「ヘッ、ヘーキだ」
慌てて返事を返すサッチ。
「そうか、よかった。だが、ちゃんと体は大事にしてもらわないとな。たとえそれが指先だとしても、だ」
そう言って、ハンカチを巻きつけた指に優しくキスを落とすビスタ。
サッチはもう真っ赤だ。

「……ホント、ベタベタだな。俺なんだか胸焼けしてきたわ」
二人の作り出す甘い雰囲気に、顔をしかめるエース。
「それなら、残りは俺がもらってやるよい」
エースの皿に向かってフォークを突き出すマルコ。
「それはだめだ!」
急いで皿を庇うエース。
「チッ……」
舌打ちするマルコ。
「お前たち、こいつはこのまま貰って行ってもいいかな?」
ビスタが二人に尋ねる。
「いいよ、別に」
「ああ、かまわねぇよい」
「おい、お前ら、見捨てる気か!」
「見捨てるって……、可愛がって貰えばいいじゃん」
「なッ……!」
「そうだな。たっぷり可愛がってやろう」
「今は昼間だぞ、ビスタ!」
焦って叫ぶサッチ。
「……エースもマルコもケーキを食べているな」
「それがどうした」
いきなりのビスタの発言にサッチが眉をしかめる。
「なぜ二人はケーキを食べているんだ?」
「そりゃ、おやつの時間だからだろ。ビスタだって知ってるだろ」
今更何を言っているんだ、とビスタを見るサッチ。
食いしん坊のエースと甘いもの好きのマルコが昼におやつを食べるのは、既にこの船で習慣化している。
もちろんビスタだって、そのことは知っているはずだ。

「なら、俺もこれからおやつタイムだ」
「!!!」
見上げたその顔は口端が上がっていた。
しかも始末が悪いことに、目は真剣そのものだ。
行動も素早かった。
サッチを華麗に抱き上げると、ビスタはじゃあな、とマルコたちに声をかけ、そのまま食堂から姿を消した。
サッチには抵抗する間も与えられなかった。
きっとこれからエースやマルコが食べているケーキに負けない、甘い時間を過ごすことになるに違いない。


(……明日のおやつ大丈夫かなぁ)
(いくらなんでも朝までには解放するだろい)
(起き上がれなかったらどうするって話だよ)
(……仕方ねぇ、そん時は叩き起こしにいくぞ)
(諦める気はないのか)



初54!
ビスタは過保護でとっても甘いと思います。
でも人の扱いが上手いから、サッチはあれよあれよと言う間にビスタのいいなりです(^^)
そして海賊なのにハンカチとか常備してそうと思った。なのでこれです。
でも口調がまだ怪しい。勉強しなくちゃ。
それと甘党のマルコを書くのが大好きです。楽しい!


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