恋慕開花

「エース!」
「ルフィ〜!!」
その姿が見えると同時に顔を輝かせ、走り寄る。
ガッシリと固く抱き合う兄弟はその後、会えた嬉しさを口々に言葉にする。
ここに来るまで何が起きたか、何を体験してきたか、両者語り始めれば割り込む隙間もない程に話は盛り上がる。
一度落ち着かせようとするメンバーもやがてはそれを諦めて苦笑の後にその姿を微笑ましそうに見つめる。
数年ぶりとなる兄弟の再会、そして麦わら海賊団と白ひげ海賊団の出会いにたちまち船は会話の渦に包まれた。



「あんなに嬉しそうにしちゃって。本当に会いたかったのね」
破顔したエースの顔を思い出し、サッチは微笑んだ。
「な〜んて麗しい笑顔なんだぁああ!vV」
「きゃあ!」
食堂の扉を開け放ち、ぐるぐると舞い踊るように現れた男にサッチは思わず声を上げた。
「おっと、失礼レディ。あなたが余りにも美しくてつい取り乱してしまいました」
「え、あ……いらっしゃい」
華麗にターンを決め、直立姿勢で丁寧にお辞儀をする相手に思わずサッチも笑顔で返す。
「あなた確かサンジ君よね?」
「ああ〜っvV俺のこと覚えて頂けていましたか!?嬉しいなぁvvv」
「ええ、さっき自己紹介して貰ったばっかりだしね」
嬉しそうに両腕を広げるサンジの体からハートが溢れ出しているのはおそらく気のせいではない。
そのテンションの高さに圧倒されつつもサッチは言葉を続ける。
「確かコックを担当しているのよね?」
「そんなことまで覚えていただけているなんて!vV」
「そんな、大したことじゃないわよ。エースの大事な弟さんのクルーだもの。覚えて当然よ」
それに自己紹介の間もサンジは他の白ひげ海賊団の面々にはあまり気を留めず、サッチばかりを見て、声を掛けてきたのだから。
他の誰よりも印象が強いに決まっている。
「ああ、そのお顔も愛らしい!vV」
「えっ、あ、愛らしい!?」
耳慣れない言葉にサッチは動かしていた手を止めた。
「もちろん!vvvその透き通るような白肌にアップされた柔らかく滑らかな髪!何よりその魅惑的なボディvvvとてもお美しい〜!vV」
「ちょっと褒め過ぎじゃない?」
そうは言うもののサッチも満更ではなさそうである。
船の男たちはあまりこういう事をサッチには言わない。
女と言うよりは兄弟、そしてクルーの一員として見ているからだ。
それは女であっても差別されていないということで、嬉しいことではあるが反面、セクシーなナースたちに見惚れたり、街の女の良さを語る男たちの姿を見ていると寂しいとも感じていた。
島に降りても白ひげの戦闘員だと知れば近づいてくる男は数少なく、格好もあまり色気がないのは自身も自覚していた。
こんな風に男性に(それも年下に)褒められたのはいつぐらいぶりだろうか。
「サッチちゃんも料理を?」
サッチが今しがた刻んでいた食材と手にした包丁に目を留め、サンジが尋ねる。
「ええ、みんなと同じく戦闘員でもあるんだけど私は料理も好きで……」
「そりゃあいい。俺も一緒にお手伝いしても?」
「ええ、よかったらぜひ」
サッチもサンジがどんな風に料理を作るのか、どんな料理を作るのか楽しみだった。
「でも料理をするのなら、これは没収ね」
サッチの指先がサンジの口元に伸び、咥えていた煙草を奪い去る。
「味をみるコックがこんなもの吸ってちゃダメでしょう?どうしても止められないとしてもここで吸うのはよしてね」
そう言って煙草を窓から海へと放り捨てる。
「……すみません」
「そんなに神妙にならなくてもいいのよ。ただの私の我が儘みたいなものと思ってちょうだい」
飽くまで明るく笑うサッチに、サンジもまた薄く微笑んだ。

「……すごい」
決してお世辞ではない、感嘆の声が漏れた。
白ひげのコックたちも選りすぐりの腕を持つ者たちばかりだがサンジの腕はそれと匹敵する、いやもしかしたらそれ以上であるかもしれない。
味見させてもらった料理に思わず頬に手を当て、ため息を吐く。
「いやぁ、サッチちゃんに褒めて貰えるなんて幸せだなぁvvvサッチちゃんのもすごいですよーvVこのミネストローネなんて蕩けるような味だし、ナポリタンの茹で具合も最高で味付けも申し分ないし、グラタンも他のものもみーんな美味しい上に飾り付けもグッドです!vV」
「そうかしら……」
「もっちろ〜んですとも!vvv」
後はメインを残すのみ。
出来た料理を運ぶために一緒に作業していたコックたちも出払い、広いキッチンで二人きりとなる。
その状況に自分でも気づかず、サッチは胸を高鳴らせていた。
会話してわかったが彼はただ女性に甘いというだけでなく、ちゃんとした自分の芯を持っていて、紳士的だ。
それに“ちゃん”付けで名を呼ばれることにちょっとしたくすぐったさも覚えていた。
彼と一緒にいるとまるで自分も若返ったのではないかと思える。
知らぬうちにサッチの顔は穏やかな色を浮かべる。
「ところでサッチちゃんはどうしてコックに?」
サンジの身の上話にまで話は広がり、サッチも同じように問われる。
「知りたい?」
「ええ、ぜひ」
メインの飾りつけを二人で施しながら会話は続けられる。
「そうねぇ……私のはすごく単純よ。ほら、美味しいお料理を食べると誰だって幸せな気持ちになるでしょう?子供の頃、美味しそうにご飯食べているみんなを見てそう思ったの。それでそういう気持ちを私もみんなに感じさせたいなって……」
「素敵ですね」
その声のトーンにサッチはハッとして手を止める。
仕上げのソースに取り掛かっていたサンジがいつの間にか正面から自分を見つめている。
その目は驚くほど優しい。
先ほどまで自身にぶつけていた激しい賛辞の嵐ともまた違う。
本当に心の底から自分のことを見てくれて、称賛するその言葉は深くサッチの胸に響きわたった。
「そ、そんな……」
どうしたのだろう、上手く頭が回らない。
柄にも無く、赤面するサッチの表情には触れず、サンジはその左手を取った。
「今度はぜひ俺のためのサッチちゃんの手作り料理食わせてくださいねv」
拾われた手が上へと引き寄せられ、甲に温かく柔らかなものが触れる。
ちゅっというリップ音を響かせた後、ゆっくりと握られた手は降ろされた。
硬直するサッチは顔どころか首までもが真っ赤に染まっている。
「それじゃあ、俺これ運んじゃいますね〜vVサッチちゃんも早く来てくださいねvvv」
仕上がったメインの料理を手にし、サッチが食堂を去っていく。
パタリと扉が閉まり、その姿と足音が完全になくなるとサッチはその場にずるずると崩れ落ちた。
「……何よ、あれ……」
手を当てる両頬は熱い程に熱を発している。
きっと今の顔はいつもの自分を知る家族には見せられたものじゃない。
激しく鳴り響く心臓を抱え込む様にサッチは蹲り、目を瞑った。


(これじゃあ、まるで恋じゃない)



トラツグミ様よりリクエストいただきました。
『サンジにしつこく口説かれ、サンジにいつも大人の女の余裕が吹っ飛びまくりなサッチ』です!
ごめんなさい。サンジそんなにしつこく口説いてないような……。
キャラ崩壊しちゃってたらすみません…!;
サッチ、最後にサンジに惚れちゃってますね。
でも後から同じようにナース口説いてるサンジ見て落ち込んでたりすればいい。
他の子と変わらない扱いなんだって。
でも優しくされるのは嬉しい。
もだもだ期間を経て結ばれちゃったらいいんじゃないかなーと思いますw

大変遅くなりまして申し訳ありません^^;
そして理想と違っていたらすみません!
書き直し&返品は受け付けますので!

企画参加ありがとうございました☆


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