己が運命

「またか……」
ため息と共に吐かれる男の声。
苛立つわけでもなくその声は単なる事実を述べている。
声の主はしばらくの間その場で佇んでいたが、もう一度ため息を吐くとゆっくりと己の部屋を出た。
目指す場所はもう決まっている。



「入るぞ」
「やっと来たな」
「やっぱりあんたか」
手でライターを弄ぶシャンクスを見てベックマンはまたため息を吐く。
「あんたはないだろう。ずっと待ってたんだ」
ベッドにある身はそのままに顔だけを向けるシャンクス。
ベックマンは少し躊躇った後に言い直した。
「お頭」
「違うだろ」
「シャンクス」
ベックマンがそう言うとシャンクスは嬉しそうに笑った。
「なんだ?ベン」
「あんたが言わせたんだろうが」
問い返すシャンクスにベックマンも言い返す。
呆れ顔にシャンクスはなおも笑う。
「俺の欲しい言葉をくれよ。それに名前」
「シャンクス、火」
そんなシャンクスの様子を気にも留めずベックマンは手でライターを求める。
近づく相手の手にシャンクスは手を伸ばすとライターを渡すのではなく、その手を引いて唇を塞いだ。
「こんなもんより俺の方が健康にいいぜ?」
ちらつかせる指にはいつの間にかさきほどまでベックマンが銜えていた火の無い煙草が挟まれている。
「あんたな……」
「シャンクスだ。ベン」
「シャンク……ん!」
シャンクスの唇がベックマンのものと再び重なり、舌が口内を探る。
熱い舌が何度も触れ合い、しつこく中を舐めまわした。
「ッふ、ぁ……」
ベックマンの口から堪らず息が零れる。
「な、気持ちいいだろ?」
舌をチラつかせながら見上げるその目はその先まで望んでいるのがわかる。
「それ止めろよ。折角の男前が台無しだ」
ベックマンの眉間に寄った皺を捉え、唇が笑う。
笑う唇はその頬に触れて細やかなリップ音を響かせた。
「今夜はここで寝ろよ」
「……手ぇ出さないならな」
「え〜」
ベックマンの答えに不満げな声が上がる。
「俺のこと愛してんなら受け入れろよ」
「毎度毎度そう簡単に受け入れられるか」
「つまんねぇな」
「……なら帰るぞ」
背を向け扉へ向かおうとする体を腕が引き戻す。
「待てよ。帰っていいなんて言ってないぜ?」
「そうだったか?」
恍けたように言えば相手はさらに強く引き寄せてきた。
「ああ。だからここにいろ。大丈夫、嫌がる相手を襲うような真似はしないさ」
体を抱く腕が下へと下がり、触れた指が手の平を握る。
さも愛しげに絡められる手にベックマンは一息つくとシャンクスの方へ向き直った。
「隣を開けてくれるか?」
「もちろんだ」
二人分の重みを受け、ベッドが軋む。

「……おい、手は出さないんじゃなかったのか?」
纏わりつく片腕と両足にそう囁けば離れていた視線がかち合う。
「抱きしめるくらいいだろう。お前は俺のものなんだから」
体を封じる相手は微笑んで答えた。
「それにお前だって本気で嫌なわけじゃないだろ?」
人を見透かす悪戯な瞳に拘束された時点でおしまいだ。
放たれた言葉は嘘ではなく、事実。
そのことを自覚する自分を意識してベックマンはまたため息をついた。
絡みついた腕の指先が静かに背を辿る。
どうやら今夜も安眠を得るのは難しいようだ。


(本当に可愛いな、お前は♪)
(……そんなことを言うのはあんたくらいだ)
(俺だけが気づいてる魅力ってのもいいもんだ)
(……バカにつける薬は無いか)
(ん?何か言ったか?)
(なんでこんなバカと運命共にしようと思ったのが疑問でな)
(それこそ運命ってやつだろ)



Shin.様よりリクエストいただきました。
シャン副です!

普段書かない人なのでちゃんと書けたかどうかわかりませんがベックマンはため息吐きつつもシャンクスの言うこと一々聞いてくれそうです!
躾けは厳しいけどちゃんと甘えさせてもくれそうw
サチマルとかとはまた味の違う熟年CPですよね^^

真っ先に参加いただいたのに遅くなりまして申し訳ありません。
少しでもお気に召していただければよいのですが・・・。
書き直し&返品は受け付けます。

企画参加ありがとうございました☆


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