愛の証

※流血注意、バイオレンス









パックリ開いた傷口から覗く肉塊。
鼓動を鳴らすたびに真っ赤な液体が流れ出す。
赤に溺れたその塊を見て目の前の唇が歪む。

「ああっ・・・」

鼓動とずれた吐息。
歪められた眉筋は曲がり、震える唇は真っ青。
冷たくなった指先は絡みつくことさえ出来ずに床に転がっている。

「は・・あ・・・」

美しい青い宝玉が水底に沈んでいる。
虚ろになりかけた揺らめく青を救うように唇が眼球を吸い上げた。

「うっ・・・」

苦い塩水が舌を冒す。
決壊した瞳が救い出したはずの青を掻き消す。

「・・・・・・」

鼓動がゆるくなった肉塊へと唇が落ちる。
生温く、血に溢れた心の臓器。
相手の血に塗れた唇が優しく啄む。
名残惜しげに離れた唇は赤く濡れたまま再び瞳を喰らう。
水と混じりあう血が静かに頬へ流れる。

「サァッ・・・チ・・・」

青ざめた唇が狂おしく囁く。

「ん・・・もういいよ・・・」

告げられた言葉に新たに息が吐かれた。

「ハッ・・・」

赤に塗れた肌が煌めく青に包まれる。
塞がっていく傷口。
跡形なく消え去った傷の証明は乱れた息と辺りを染める赤。

意識を投げ打った体を拾い上げる腕。
部屋に木霊する靴音と並ぶ赤い水音。

塞がれた胸に再び唇を落とし、満足気に男は笑う。
肌と肉の先にある塊は誰にも見ることは出来ず、そして触れられはしない。
閉ざされた肉体の奥底にあるものを知るのは己のみ。
決して拭えぬ証を残した心の臓は今も鼓動を繰り返している。

脈拍は止まらない。
抱く相手が死するまで。

終わり告げるその時まで君は俺のモノ。


心臓にキスひとつ


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