勝負
「ん、ぅ・・・」
サッチの、あまりにも深い口付けに呼吸が苦しくなりマルコはうっすらと目を開けた。
その視界の先には緑が広がっていて、マルコは一瞬それがわからなかった。
「なっ、何見てんだよい!」
「え?マルコだけど?」
一呼吸して焦点が合うと相手も自分を見つめているのがわかった。
「キスしてるときに目ぇ開けてんじゃないよい!」
真っ赤になって叫ぶ。
「何で?」
「“何で”じゃないよい!普通つぶるだろい!」
「そうとは限らないぜ?」
「俺はつぶってる!」
「じゃあ、お前も開けとけば?」
「ふへ?」
サッチの思わぬ答えにおかしな声が出る。
「まっ、マルコには無理か。恥ずかしがり屋だもんな〜、マルコは」
「ばっ、バカにすんない!それくらい出来るよい!」
にやにやと笑みを浮かべるサッチにマルコは叫んだ。
「ふぅん?ホントか?」
「本当だい!」
疑わしい目で見るサッチに張り合う。
「じゃあ、勝負しようぜ。どっちが最後まで相手を見ていられるか」
「え!」
「いいよな?それともやっぱ無理か」
「ッ、いいよい!」
こうなっては後に引けない。
結局勝負することになった。
サッチの手がマルコの肩に触れ、唇が押しつけられる。
段々と深みを増す舌に気をとられながらもマルコは必死になってサッチを見た。
サッチは余裕だ。
舌を絡めるだけでなく、つついたり、吸ったりしてくる。
挑発しているのは明らかだ。
マルコもサッチにしがみつき、ぐっと耐えた。
濃厚な口付けが続いてもう十分が過ぎただろうか。
とうとうマルコが音を上げた。
青い瞳が閉じられる。
「んはっ、あ・・・」
最後にきつく吸い付き、震える唇を舐め、さらに軽いキスを落すとサッチは満足そうに述べた。
「俺の勝ちだな」
悠然と微笑むサッチをマルコが睨む。
その顔は赤い。
「悔しいならもう一度キスするか?」
「もういいよい」
真っ赤になってそっぽを向く恋人をサッチは抱き締めた。
「そんなこと言わずもっかいしようぜ。今度はちゃんとつぶるから」
耳元に寄せられた言葉にマルコが振り向く。
その頬にやさしく触れてサッチはもう一度唇を落とした。
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