子育てしましょ♪

「あんたらがマルコとサッチか?」
談笑する二人の間に割って入ったのは髪の長い……少年?
目の前の子供は下手をすれば少女と見間違うような容姿である。
それでも眉や目元はきりりとして美しい。
「えっと、お前は……」
「俺はイゾウだ。知ってんだろ?」
サッチが聞こうとすればそれを遮り答える。
まさか知らないとは言わないよな?と目が言っている。
「今度はお前かよい」
ふぅとマルコはため息を吐いた。
「俺の面倒を見てくれるんだって?」
「やっぱりそうなってるのか……」
イゾウの言葉にサッチの肩が落ちる。
「よろしくな」
明らかに嫌そうな顔の二人を無視してイゾウは声をかけた。



「なぁ、あんたそれでも大人か?」
「うるせぇ!」
サッチが喚いた。
サッチとイゾウはただいまゲームの最中。
和の国のゲームで花札だ。
今のでイゾウの5連勝。
サッチは惨敗。
「弱すぎて話にならねぇよ」
「ああ、くそっ!」
バンッ!と手札を投げつける。
「大人げないぜ?」
「そうだよい、サッチ」
イゾウの言葉にマルコが相槌を打つ。
「うるさい!なら、マルコやってみろよ!」
散らばったカードを集め、マルコに差し出す。
そんなサッチに呆れつつもカードを受け取ってマルコは席に着いた。
そしてイゾウに向かって微笑む。
「悪いが俺はこいつみたいに甘くないよい?」
「俺が勝つよ」
イゾウも笑って答えた。

「俺の勝ちだな」
マルコは悠然と言った。
「嘘だろ」
イゾウは目を丸くしている。
「俺に勝てるなんて……」
おそらく負けたことなどあまりないのだろう。
「甘くないって言ったろい。それとも手加減して欲しかったか?」
「そんなのいらねぇよ」
ムスッとして答える。
「あいつはあんなに弱かったのに……」
「サッチと一緒にするなよい。あいつは脳みそが軽いんだよい」
「マルコ今のセリフ聞き捨てならねぇんだけど!」
そうサッチがマルコに反論するも、
「ああ、なるほどな」
納得したようにイゾウも頷いた。
「お前らッ!」
思わず拳を震わせるも手は出さない。
マルコ相手に勝てる気はしないからだ。
良くて引き分けだ。
まして口でこの二人に勝てるわけがない。
サッチは悔しさを飲み込んだ。



「ちょっと俺、出てくる」
そう言ってイゾウが急に立ち上がる。
「どうした?」
「厠だよ」
つまりトイレだ。
「行って来いよい」
「あちこち歩き回るなよ」
「わかってるよ」
イゾウが出て行った後、サッチはマルコに向き合った。
「お前、さっきから俺に対してひどくね?」
「そりゃ、お前がそうされるべき対象ってだけだろい」
「なんだと?」
「ガキに口でしてやられるなんて、バカだって言ってるんだよい」
「このやろう!」
我慢できずにサッチはマルコに跳びかかった。
すぐにマルコも応戦し、ベッドの上でもみくちゃになる。

「仲いいんだな」
いつの間にかイゾウが戻ってきて二人の様子を眺めている。
「なんならまた出て行こうか。俺はそういうことには理解あるから。存分に楽しめよ」
イゾウの言葉に二人して顔をしかめたがその言葉の意味はすぐにわかった。
揉み合う中で二人の髪や衣服は崩れ、息は上がっている。
しかもそれがベッドの上なのだ。
意味深な言い方をされればそれが何を指しているのかはすぐにわかる。
「俺とマルコはそういう関係じゃねぇ!」
叫ぶサッチにイゾウはくすりと笑った。
「じゃあ、そういうことにしといてやるよ」
「だからっ、違うって!」
「なんでだ?別に互いがいいならそれでもいいと思うぜ?」
「よくない!全然よくない!」
「止めろい、サッチ。こいつ楽しんでるだけだよい」
声を荒げるサッチにマルコが言った。
「はぁ!?」
「へぇ、やっぱりあんた鋭いな」
「こいつが鈍いだけだよい」
「なっ、マルコ!」
またも自身をバカにする発言にサッチが大きな声を出すが、二人とも聞いていない。
「さっきのゲームの続きしようぜ。今度は勝ってやるよ」
「本当かねい」
「俺が勝ったら言うこと一つ聞けよな」
「勝てたらな」
「もうお前らなんて知らねぇよ!」
飽くまで無視し続ける二人にサッチは部屋を飛び出した。
「……いいのか?あれ」
「どうせすぐに戻ってくるよい」
「ホント大人げないよなぁ……」
甲板をものすごい勢いで走り去るサッチを見て隊員たちは何事かと目を見張った。

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